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私立夜宵★図書館【2024/7】
夜宵★の読書は図書館の本と決まってる。
貧乏だったから、本が読みたかったら図書館で借りなさい、って母に言われて育って、図書館は行きつけだった。
だけどこのところ読書量が激減。
今年は意識的に読もうと決意した。
図書館で借りて、夜宵★の心の図書館に入った本をいざご紹介!!
✦『その扉をたたく音』瀬尾まいこ
いた、天才が。いや、ここまできたらもはや神だ。どうしてこれほどの能力のあるやつが、こんなところにいるのだろう。真の神は思いがけない場所にこそ、現れるものなのだろうか。
この冒頭、これは鮮烈な才能のきらめきの物語か、と思った。
主人公が、埋もれた天才を見出し、一緒に上を目指していくような。
そうではなかったのがむしろ、このお話のおもしろさだ。
天才・渡部君をgetしようと、彼の勤める老人ホームに通いつめる宮路。
渡部君の極めてフラットな対応、老人たちの正直な冷めた目線が、宮路の熱さと対照的でおかしい。
宮路と老人たちとのやり取りがまた愉快だ。
宮路をパシリにして言いたい放題の老人のしたたかさ、宮路の率直なつっこみもテンポがいい。
老人ホームになじんでいく宮路だが、
生きていけばそのぶん、明日は一つ減り、また一つ減っていく。誰かと一緒にいられる明日。記憶に留めていられる明日。現実は想像以上に過酷だ。
老人たちから知らされる現実世界。
それでも、
忘れたくない。そう思える日々が送れてよかった。ありがとう。
そう人生の最後に言えたら、どんなに人はしあわせか。
「ぼんくら」な宮路の、陽気な素直さ、ある種の純情が、じんわり私の心に滲んだ。
✦『口福のレシピ』原田ひ香
日本における洋食の黎明期、レシピ作りに情熱を注いだ人たちの物語。
「旦那様」、「奥様」、「しずえ」、この三者の関係性の均衡が何気なく、でも細やかに描かれている。
料理の描写も繊細。
丁寧に料理を作ってみたくなる。
✦『禍』小田雅久仁
奇怪、妄想的、狂気の沙汰な物語集。
禍々しいのに読まずにいられない奇妙な求心力だ。
何が正常かわからなくなる感覚に陥る。
✦『ともぐい』河崎秋子
熊との死闘の描写は、息を吞む臨場感で、神聖ですらあった。
温度、湿度、臭いまで伴って、情景が浮かび上がる。
ラストの展開は小道具の伏線から予想された。
設定は違うのだけど、松浦寿輝著『BB/PP』を彷彿とさせる。
(松浦寿輝著『BB/PP』↓↓↓)
「ばかもの」や「もういなくていい」者の末路。
それを評価する側だった主人公が、される側へと入れ替わる。
そんな皮肉で因果な現実をどう受け止め、どう振る舞うか。
ラストは筋書きよりそこが見どころだ。
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