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伊藤詩織 『Black Box ブラックボックス』 : 安倍晋三・ 中村格・ 山口敬之・ ネトウヨ


書評:伊藤詩織『Black Box』(文春文庫)


本書は、著者・伊藤詩織が『2015年4月3日、当時TBSテレビの政治部記者でワシントン支局長だった山口敬之と、都内で会食した。しかし、飲酒後に記憶を失い、深夜から4日早朝にかけてホテルで準強姦被害を受けたとして山口を訴えた。』事件について、著者の視点から、事件及び事件以降のあらましを描いて、日本におけるこの種の犯罪被害者が、いかに「泣き寝入り」を強いられる状況にあるかを伝え、その改善を訴えた一書である。(『』内は、Wikipedia「伊藤詩織」より)

黙っていては世の中は変えられず、弱い者が泣き寝入りを強いられる。ならば、ジャーナリスト志望者である自分が、自分の身に起きたことを隠さずに語り、現状の問題点を社会に広く訴えるべきではないのか。一一著者はこう考えて、顔出しで、自身の準強姦被害事件と、それを取り巻く社会の問題を訴えたのだ。

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だが、そんな著者の思いとは裏腹に、この事件は「安倍晋三首相」案件として、世間に注目されることになる。

なぜなら、伊藤に準強姦を加えた山口敬之が、当時「向かう所敵なし」状態だった安倍晋三総理にベッタリのジャーナリストであり、『総理』(幻冬社)という提灯本を書いているような人物だったからである。
さらに、この準強姦事件では、当初山口には逮捕状が出ており、山口がアメリカから帰国し逮捕というその日になって、警察上層部から逮捕状の執行に「待った」がかかり、結局、山口は逮捕を逃れたという事実もあるからだ。

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そして、この「待った」をかけた人物というのが、当時、警視庁の刑事部長だった中村格
このあと出世して、警察のトップである警察庁長官にまで上り詰め、先日の「安倍晋三元総理射殺事件」の責任を取って辞職した、あの中村格・前警察庁長官である。

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山口敬之による準強姦容疑事件は、事件それ自体としては、特別なものではなかった。
本書著者の準強姦被害事件については、所轄の警視庁高輪署が必要な捜査をし、容疑者である山口敬之を逮捕して取り調べしようと、裁判所に逮捕状を請求。これが認められて逮捕状が出され、山口の帰国を待って、まさに逮捕しようとしたその当日、「本庁刑事部のトップである刑事部長」から、いきなりストップがかかった。
一一この点こそが「異常」で、テレビドラマの刑事物でもあるまいし、現場を無視した、こんな警察上層部の露骨な政治的介入は、前例のないことだった。だから、マスコミも、この点に注目したのである。

中村格刑事部長(当時)は、自分が逮捕状の執行を止めたということを認めており、その理由は「被疑者は、社会的地位のある人物であり、逃走や証拠隠滅の恐れがないので、逮捕(強制捜査)せずとも、任意捜査で十分である。」ということであったという。一一なるほど、一応もっともらしい理屈だが、しかし、高輪署が逮捕状を取ったのは、それが通例のやり方であり、仮に「被疑者逃走の恐れ」はなくても「証拠隠滅の恐れ」はあった、と考えるべきだろう。

実際、容疑者である山口敬之は、安倍晋三総理人脈の人物であり、その意味で「あちこちに手を回す(ことで、あちこちに圧力をかけて黙らせる)」ことが可能なのだから、それが何よりの「証拠隠滅」なのではないだろうか。

そして、事実そのとおりになった。
中村格刑事部長は「任意捜査」で十分と言ったが、その結果は「不起訴」である。
高輪署が「逮捕状」を取ったのは、伊達や酔狂ではないはずで、よく言われる「身柄を括って取り調べをすれば」自供も得られて、起訴できる、と踏んでいたからだと見て、間違いないはずだ。

それを、この「容疑者の人脈」以外は「取り立てて変わったものではない準強姦事件」に、わざわざ刑事部長が口を出したのだから、これは「政治的圧力」と考えるのが至当であろう。

つまり、警察庁長官を狙おうというような「警察官僚」である中村格は、単純に「警察官」的な感性の持ち主ではなく、「官僚」的な考えの持ち主だったということだ。
「肝心なのは、事件を解決することではない。あちこちに配慮して、全体として、上手く収めることこそが大切なのだ」と考えるような人物だったから、容疑者である山口敬之が「著名なジャーナリスト」だと聞き、念のために調べてみたところ「なんと、山口は安倍総理と繋がるジャーナリストでははないか。そんなもの、所轄の判断だけで簡単に逮捕させることなどできない。そんなことを許せば、われわれの評価にかかわる」と、大筋このように「忖度」して、事件を潰しにかかった、と考えるべきなのである。

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そして、このように「気の利く」人物だったからこそ、当人の期待どおりに、警察庁長官にまで上り詰めた一一のだが、天網恢々というやつで、自分の出世にプラスになった安倍晋三元総理が射殺された結果、警察トップとしての責任を問われて、今度は辞職せざるを得なかった、というわけである。

ちなみに、山口敬之の準強姦容疑については、山口は後に、泥酔状態だった被害者からの合意(?)を得たうえで、性器を挿入するなどしたと、実行事実を認めているが、裁判においては「同意があったかもしれない(被害者側の記憶が飛んだいるため、同意など無かったことの立証が不可能だった)」という点で、準強姦事件こそ不起訴が確定したものの、民事裁判では賠償判決が下されており、本書に関する名誉毀損の逆提訴も退けられている。

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このようなわけで、世間は、本書著者が訴えたかった、強姦や準強姦といった性犯罪をめぐる、不十分な被害者対応の問題ではなく、どうしても「政治向き」の話に流れてしまったのだが、著者が勇気を振るい、顔出しで世間に訴えたこの問題を、我々もなおざりにするわけにはいかないだろう。表には出ないだけで、こうした犯罪被害に遭いながら、泣き寝入りしている人は、我々が思うよりも、ずっと多いのである。
日本は、日本人が思うほど「安全・安心」などではないという事実を、私たちは知り、それを直視して、こうした不可視化された犯罪被害者を出さないシステムを作らなくてはならないのだ。

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一方、このような勇気あるジャーナリストに対しても、「政治的な意図からの誹謗中傷」の止まないのが、我が国の現実なのだが、そのことをはっきりと自覚している人が、一体どれだけいるだろうか。

例えば、それは本書についての「Amazonカスタマーレビュー」ひとつ見ても、その野放し状態を確認することができる。

本書には、現時点で「507」個の評価が寄せられており、その評価は(「星5つ」が満点)、平均で「星4つ」強の高評価を得ている。つまり、平均すれば84点であり、意図的に低い評価を与えている「安倍晋三信者のネトウヨ」の「悪意票」を差し引けば、きわめて高い評価だと言えるだろう。

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ところが、本書へのレビューで上位に表示されているのは、軒並み「低評価」のものとなっているのだが、これはどうしたことだろうか?

無論それは、「ネトウヨ」が書いたレビューに、動員された「ネトウヨ」が「イイね」をたくさんつけるので、そのレビューの表示順位が上がっている、ということである。

例えば、現時点で、同ページのレビューを、トップから順番に紹介すると、こうなる。

・「星2つ」waka(殿堂入り・ベスト500レビュアー)「引っ掛かる点」(1401)
・「星1つ」テニスおやじ「文藝春秋も終了」(736)
・「星1つ」M.山田「大嘘大女優」(492)
・「星1つ」Amazon カスタマー「結局、金儲けか?」(391)
・「星2つ」MASH「応援できなくなった」(278)
・「星1つ」前田洋伸「あり得ない」(284)
・「星5つ」Amazon「告発しないほうがまだいい日本」(357)
・「星1つ」ゆっきー「ありえないとしか思えなくなった」(300)

見てのとおりである(末尾のカッコ内の数字が「イイね(参考になった)」の数)。

「評価(レビューなし)」の平均点なら約「84点」なのに、「イイね」の多いトップレビューとなると、平均で「20点」にも満たないのだ。これはまさしく、「ネトウヨ」の動員力の賜物である。

したがって、こうしたレビューだけを見て「日本人は、バカばっかり」だと嘆く必要はない。

「ネトウヨ」というのは、見かけほど多くはないというのが、最近の研究でも明らかになっており、「ネトウヨ」は、ネット上で目立つから実勢以上に多く見えるだけなのである。つまり、9割がたは「まとも」だと、そう理解して良いのだ。

さて、ここでは、「イイね」の数がダントツに多く、カスタマーレビュアーとして『殿堂入り・ベスト500レビュアー』にも選ばれている「waka」氏に注目したい。
同氏は、Amazon社が「殿堂入り」させるほどの、優れたレビュアーなのだろうか?

もちろん違う。それは、この「子どもじみた」レビューの中身を見ても明らかなことで、ご本人は「証拠を挙げて、合理的な説明をしている」つもりなのだろうが、これが「ネトウヨ」の「合理性の限界」だという好例にしかなっていない。

「waka」は、「テニスおやじ」(「テキサス親父」ではない)氏や「M.山田」氏のような、難癖をつけて誹謗中傷するだけの、わかりやすい「ネトウヨ」ではない。
「waka」氏には、いちおう「中立」を装うことで、一般読者を欺こうとする意図があるから、文体自体は比較的まともなのだ。

しかし、そんな「waka」氏に、どうしてこれだけ多くの「イイね」が集まるのかというと、それは同氏が自己紹介において、自分が典型的な「ネトウヨ」だと明かしているからである。

同氏の「プロフィールページ」を開いてもらって、氏がフォローしている作家をみて欲しい。しっかりと、お馴染みの「坊主頭の男」もいます。
氏のフォローしている作家とは、

・石平
・百田尚樹
・ヘンリー・S・ストークス
・小川榮太郎
・ケント・ギルバート

の以上5人。
すべて、「安倍晋三」周辺の、自称「保守」の著述家である。

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このように「私は、安倍晋三シンパのネトウヨ」ですよと、常々アピールしているからこそ、この人の書くレビューに対しては、その中身を見ることもなく、お仲間の「ネトウヨ」が、ルーチンワークとして「イイね」をつけ、Amazonも、その中身をチェックすることなく「評判の良いレビュアー」として「殿堂入り」させた、というのが、ことの真相である。

ともあれ、このように本書は、「安倍晋三シンパのネトウヨ」が、使命感に燃えて誹謗中傷しなければならないような、安倍晋三周辺には「不都合な事実」の語られた本なのだ。

だから、そうした意味で、この「事件」についてはテレビニュースやネットで「大筋は知っているよ」という人にも、本書を是非ともオススメしたい。
あなたの「知っているよ」は、実のところ「ネトウヨ並み」に止まっているのではないかと、そう心配するからである。

(2022年9月16日)


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 【追記】(2022年9月20日)

上の本文で、さんざ「ネトウヨ」を晒しものにしてあげたので、お仲間の「ネトウヨ」が、二人で連れ立って、コメントに来てくれました。

しかし、その内容は、いつもの「ネトウヨ」丸出し。
しかも、このお二人のアカウントは、これもいつもどおりの「捨てアカウント」

令士葉月https://note.com/modern_ixora777
utakahttps://note.com/utaka_1

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まったく、「日本人」として恥ずかしくないのかね。
安倍晋三も草葉の陰で泣いてるよ(もう泣けないか)。

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以上、追記(2022年9月20日)

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【関連記事】(2023年3月29日・追加)


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