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総括されるべきは 「安倍・菅政権」を支えた、 われわれ 〈日本国民〉である。 : 朝日新聞取材班 『自戒する官邸 「一強」の落とし穴』

書評:朝日新聞取材班『自戒する官邸 「一強」の落とし穴』(朝日新書)

7年8ヶ月の長きに及んだ「安倍晋三政権」が「菅義偉政権」に譲られた段階で書かれた、「安倍政権」についての「概略的総括の書」だと言って良いだろう。

本年7月末の刊行直後に購入したが、他の本を読んでいるうちに、コロナ禍への無策などに対する逆風を受けて、菅首相がとうとう次の自民党総裁選への不出馬を表明し、首相の座を明け渡すことが明らかにされたので、さっさと読まないと、本の内容が古くなってしまうと焦った。本書の帯には『政治の中枢で何が起きているのか?』『萎縮と忖度の果てに待ちうけるものとは?』といった惹句があるけれども、私はそれだけを見て、うっかり「菅政権」を中心に扱った本だと勘違いして購入していたのである。

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そんなわけで、「安倍政権」については、それなりにいろんな本を読んできた者にとって、本書は、間違ってはいないけれど、「概略的総括の書」の域を出るものではなく、新しいことは何も書かれていない、とも言えるだろう。
本書には「参考文献」が記されていないが、古賀茂明、前川喜平、青木理、森功、望月衣塑子といった人たちの著作など、あれこれ読んできた者にとっては、本書はそうしたものの「まとめ」以上のものではなく、「安倍政権の問題点」を「復習」するためのサブテキストといった印象を出るものではなかった。
じっさい、こんな薄い本で、「安倍政権の悪しきレジェンド」の数々の「本質」が語り切れるわけもなく、「多数の記者の分担で書かれた、新聞連載記事をまとめたもの」の域を出るものではなかったのである。

「安倍政権」が倒れ、今回は「菅政権」が倒れることが確定した。
しかし、そのあとになって、あれこれ批判することは、政権が強かった時期に徹底した政権批判をしなかった者にも可能であろう。更に言えば、政権の提灯持ちをしたメディアにさえ、それは可能なのだ。

だから、今となって肝心なことは、「安倍政権」や「菅政権」が倒れたという過去ではなく、こうした政権を支えた「多くの国民」「多くの人々」が、政権は変わっても、何も変わってはいない、という現在の事実の方ではないだろうか。

「倒れた政権」を総括する必要はあるだろう。だが、「政権を支えた人々」の方の総括がなされないかぎり、歴史は繰り返さざるを得ないのである。

初出:2021年9月11日「Amazonレビュー」
  (2021年10月15日、管理者により削除)

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