見出し画像

MUKATSUKU

高校時代、俺は飲食店でバイトをしていた。
ピークを過ぎてようやく一息つけると思った土曜日の15時に、大して強くもないのに校名が大きく書かれたジャージを着た集団が、親からもらった小遣いで派手な財布をパンパンにして、ゾロゾロと店に入ってくるのを、正直言って不快に感じていた。

コンビニで買った1000mlのぶどう水で空腹を凌ぎ、家で食べた方が安いのにと思いながらオーダーされた料理を黙々と作っていた俺は、
その注文量の多さに、自分がいかに経済的なゆとりがないかを一層痛感させられたし、現実生活への憂鬱さが、増すばかりだった。

将来はプロになれない弱小高校の運動部でさえこのような状況なのだから、幼少期から環境に恵まれ、親や指導者達から保護を受けてきた一流のアスリートたちの世界は、貧乏な俺とは完全に隔離されたものに感じられる。まるで異なる世界に生きているかのようだ。

だから、俺たちサラリーマンを奮い立たせるために、プロ野球選手の成功体験を引き合いに出す奴がいるが、生き方や育ち方に何も共感できない俺としては、それが好きではない。

もしも、俺がライバル企業との競合プレゼンの直前に、みんなの前で「憧れるのをやめましょう」と発言したとしても、上司から「憧れは大事だろ」とか言われるのが目に見えている。

結局、ああいうとき、何を言うかではなく、
誰が言うかが重要なのだ。

だからこそ言いたい。
凡人は天才に憧れるのをやめましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?