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なぞりのつぼ −140字の小説集−

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読めば読むほど、どんどんツボにハマってく!? ナゾリの息抜き的140字小説を多数収録! ※全編フィクションです。 ※無断利用および転載は原則禁止です。
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2023年9月の記事一覧

140字小説【ぶしとり】

140字小説【ぶしとり】

「みんな夏休み何してた? ちなみに僕はカブトムシ捕まえたよ!」
「すごいね! 私はパパに頼んでトクガワイエヤス捕まえてもらったの!」
「ウチはトヨトミヒデヨシやで!」
「お前らショボいんだよ。俺なんか田舎の爺ちゃん家でオダノブナガ捕まえたぜ!」
「いつのまに《武士取り》が流行ってたの?」

140字小説【頭一つ抜けてる奴】

140字小説【頭一つ抜けてる奴】

「いよいよ魔王城だな。思えばここまでメチャクチャ大変な道のりだった……」
「感傷に浸るのはまだ早い。この先には我らが倒すべき魔王や、その魔王に仕える四天王と呼ばれる奴らまでいる。中でも暗黒騎士……奴は四天王の中でも、頭一つ抜けてるって話だ」
「そりゃデュラハン(首無し騎士)だからな」

140字小説【親子だからこそ伝わること】

140字小説【親子だからこそ伝わること】

「今度の連休にそっち戻るね」

《嬉し泣き》

「いや、泣かなくても(笑)お父さんは元気? この前ぎっくり腰になったって言ってたけど」

《筋肉》

「元気ならよかった。前にお母さんが好きって言ってたロールケーキ、今回も買って行くね」

《よだれの笑顔》

 お母さん、相変わらず絵文字使えてないじゃん。

140字小説【目に見えぬ羽根】

140字小説【目に見えぬ羽根】

「可哀想に、今どきの子どもは値上がりのせいで、羽根つきに羽根の一つも買ってもらえんのか」
「違いますよ。あれはVR……あの眼鏡を通して、実際にはない架空の羽根を見ながら打っているんです」
「何と!? あまりの欲しさに、空想で羽根つきをするとは!! どれ、ここは一つワシが作ってやろう」

140字小説【旅の醍醐味】

140字小説【旅の醍醐味】

 私は旅先で何かするよりも、そこまでの道中の方が好きだ。

 旅館の豪華な客室や大浴場もいい。だが、そこへと続く通路の方がワクワクする。

 目的地に着いたら何をしよう? そんなことを考えながら期待に胸を膨らませる、あの時間。途中で視界に入る景色……

 私の旅の醍醐味は、やはり道中にある。

140字小説【雨の日は疼いて仕方ねぇ】

140字小説【雨の日は疼いて仕方ねぇ】

「どうしたの、ケツ出してうずくまって」
「また痔が痛みだしてさぁ……すまないけど、代わりに痔の薬塗ってくれない?」
「いいけど……あっ、もしかして痛みの原因って、昨日から降ってる雨だったりする? 雨降って痔固まる、的な?」
「『地』な。別に天気関係ないから。あと早く薬塗ってくれない?」

140字小説【閣僚ボーイズ&ガールズ】

140字小説【閣僚ボーイズ&ガールズ】

「『内閣改造、閣僚ポストを大幅に入れ替え』だってさ」
「それってつまり、初期メンバーの卒業(脱退)とか、2期生募集みたいな感じ? 新メンバーは誰が加入するのかな?」
「アイドルグループじゃないんだからさ……」
「そりゃ分かってるよ。ちなみにセンターは誰だと思う?」
「不動の総理大臣だよ」

140字小説【ダイ・チュウ・ショウ】

140字小説【ダイ・チュウ・ショウ】

「いってらっしゃい!」
「行ってきます」
「…………」
「……何?」
「いや、『何?』って。出かける前の《チュウ》は?」
「何だよそれ、いつもしないでしょ」
「たまにはいいじゃん!」
「しょうがないな……あっ、ちょっと待って。先にトイレ行っとこうかな」
「出かける前の《大》と《小》はあるんだね」

140字小説【ダブりージュエリー】

140字小説【ダブりージュエリー】

「さすが、セレブのご自宅は違うわねぇ〜! 宝石がジャラジャラ……でも同じものなんていくつも要らないんじゃない?」
「目的によって使い分けるのよ。普段使いや観賞用、保存用とかね」
「なるほど、じゃあこの四つ目は?」
「それはオトコを落とすときの勝負用よ」
「(ホコリ積もってるなぁ〜……)」

140字小説【はえある】

140字小説【はえある】

「では早速、お話をお伺いしてみましょう! この度の優勝、おめでとうございます!」
「ありがとうございます。それよりさっきから、ハ、ハエがっ……!!」
「最後まで全力で走り抜いたからこそ、ハエもその汗を褒め称えているのでしょうね! あらためまして、ハエある1位おめでとうございます!!」

140字小説【どうせ俺はあごだし】

140字小説【どうせ俺はあごだし】

「ごめん、ゴマD取って」
「D? ディレクター?」
「ドレッシングのDに決まってるでしょ! あとパプリカPも」
「P……プロデューサー?」
「パプリカパウダー!」

 さすが元テレビ局社員。夫である俺はおろか、調味料まであごで使うとは。

「ちなみに醤油は?」
「醤油は醤油でしょ。何言ってんのよ」

140字小説【条件︰月を見上げること】

140字小説【条件︰月を見上げること】

「今日のおやつは昨日の月見団子の残りね」
「私にそれを食べる資格はない」
「何言ってんの」
「昨夜は十五夜にも関わらず、月の存在を忘れてぐっすり眠ってしまった……そんな私にはもう、美しい月を眺める資格なんてない。ましてやお団子をいただくなんて……」
「腐っちゃうから早く食べてくれない?」