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なぞりのつぼ −140字の小説集−

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読めば読むほど、どんどんツボにハマってく!? ナゾリの息抜き的140字小説を多数収録! ※全編フィクションです。 ※無断利用および転載は原則禁止です。
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2023年4月の記事一覧

140字小説【遅れてきたウソ】

140字小説【遅れてきたウソ】

「あっ、ごめ〜ん! アナタが楽しみに取っておいてたデザート、食べちゃった〜!」
「それはこの前俺がお前の分も食べた腹いせか?」
「えっ? いや、私ウソついたんだけど? 今日エイプリルフールだし……っていうかこの前のアレ、やっぱりアナタが食べてたの?」
「あ、あれはネコが……」
「遅ぇよ」

140字小説【袋に詰まってるもの】

140字小説【袋に詰まってるもの】

「強盗だ! 手を上げろ! 金を出せ!」
「すみませんお客様、両手を上げたままでは何も……」
「うるせぇなぁ! いいからこの袋に詰められるだけ詰めろ!!」
「巾着……しかも《5年3組》……」
「バカにすんな! 大事な袋なんだよ!」
「確かにお袋さんは大事ですよね」
「うっ……母ちゃん……!!」

140字小説【呼び名】

140字小説【呼び名】

「ばぁば、ばぁば!」
「『ばぁば』じゃなくて『ママ』でしょ? ほら、マーマ!」

 二十年後……

「ねぇママ」
「『ママ』じゃなくて『かあさん』でしょ! アンタいくつだと思ってんのよ」

 さらに二十年後……

「結局、最期まで一度も『かあさん』って呼んでくれなかったねぇ……」
「義母さん……!!」

140字小説【天国のママに会いたい】

140字小説【天国のママに会いたい】

「パパ、どこ行くの!? 私も一緒に連れてってよぉ!!」

 そうせがまれてもなぁ、娘よ。遊園地じゃあるまいし、パパはお前を連れてなんて行けないよ。

 さすがに、ママのいる天国までは……

「ねぇアナタ、スーツのポケットにこんなの入ってたんだけど……この《スナック・天国》って、何?」
「あっ」

140字小説【現実トウヒ】

140字小説【現実トウヒ】

「時の流れって虚しいわよね」
「何だよ急に」
「アンタも昔はあんなにカッコよかったのにさぁ……今じゃ見る影もないほどハゲ散らかしてさぁ……」
「ほっとけ! お前も人のこと言えないだろうが!」
「……もう無理かもしれないわね、私たち」

 そう言って、長年連れ添った嫁がワカメを切り出してきた。

140字小説【ムセンマイ】

140字小説【ムセンマイ】

「え〜っと、無洗米って洗うんだっけ? 洗わなくていいんだっけ? ……ん?」

 ふと、釜の中から何か聞こえた気がしたので、お米に耳を近づけてみると……

《……――おい、聞こえているなら返事をしろ! こちら――……》

「……え〜っと、無線米って洗ってもいいヤツだっけ? まぁいっか、洗おう」

140字小説【オジサンという名の魚】

140字小説【オジサンという名の魚】

「おっ、姉ちゃんどう? 釣れてる?」

 と、気さくに声をかけてみても、女は釣り糸を垂らしたまま一切反応を示さない。
 だから釣れない女だと、そう諦めかけた矢先……

「あれ? 姉ちゃん、きてるよ!」
「マジ!? よっしゃあ!」
「男!?」

 女はオジサンが釣れた。
 そして俺もオジサンが釣れた。

140字小説【パピーじゃなければ】

140字小説【パピーじゃなければ】

「さぁ、そろそろ荷物まとめて出ましょう。今日からアナタはマミーと一緒に暮らすのよ」
「何で? パピーは? パピーも一緒じゃなきゃ嫌だよぉ!!」
「わかってちょうだい。あとパピーはもうアナタのパピーじゃないから、パピーと呼んじゃダメ」
「じゃあ何て呼んだらいいの?」
「プペポと呼びなさい」

140字小説【廻転】

140字小説【廻転】

 もう何周目かしら? さっきからずっと、同じ道をグルグルと回ってばかり。

 きっと私はこの輪廻から抜け出せない。誰にも選ばれず、ただひたすら干からびていくだけ。

 だからそうなる前に、一つだけ聞いてもいい?

 もし私がマグロじゃなくてサーモンに生まれていたら、アナタは私を選んでくれた?

140字小説【恋、すなわち融合】

140字小説【恋、すなわち融合】

「遠距離恋愛ってどう思う?」
「遠距離とか絶対無理! 悶え死ぬ!」
「じゃあやっぱりすぐ会える距離の方がいいんだ」
「そりゃそうでしょ! 何ならゼロ距離で抱きしめてほしいわ!」
「わかる」
「もっと言えばマイナス五センチでもいい!」
「融合し始めてるじゃん」
「一つになりたいもん!」
「怖いわ」

140字小説【臭いぬるかな】

140字小説【臭いぬるかな】

「スンスン……お前、何かカレー臭するな」
「おいおい、俺まだそんな歳じゃねえわ」
「いや、『加齢臭』じゃなくて『カレー臭』な。お前、今日カレー食ったろ?」
「ああ、お昼に駅前の店でな」
「あの新しい店? 何だよ、だったら誘ってくれてもいいだろ。水臭いな」
「えっ、俺そんなにカルキ臭する?」

140字小説【こなくていい】

140字小説【こなくていい】

「ミキ子先生、好きです! 付き合ってください!」
「そう……わかったわ。じゃあ明日からこなくていいから」
「そんな!? もう塾に来なくていいなんて……」
「何を勘違いしてるのよ。明日から“子”なくていいって言ってるの! だから私のことは、その……ミキって呼んで」
「み、ミキ先生……!!」

140字小説【誤字脱字と五時脱衣】

140字小説【誤字脱字と五時脱衣】

「やっと定時か。あ〜疲れた、早く帰ってスーツ脱ぎ捨ててぇわ」
「その前にお前、この資料直しとけよ。文字間違えまくってんぞ」
「えっ、ウソ!?」
「こことか、あとここも」
「本当だ……すみません、急いで作ったもので」
「まったく……日頃からせっかちすぎなんだよ、お前は。あとズボン脱げてんぞ」

140字小説【苦肉の策】

140字小説【苦肉の策】

Q.今回の食品表示法違反について、どう受け止めておられますか?

A.はい、その点につきましては大変申し訳なく思っております。我々としましては、あらゆる商品が高騰していく日々の中でも、極力値上げせず自慢のフルーツジュースをユーザーの方々にご提供したいという思いからの、果肉の策でした。