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創作ものがたり

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#夢

夢の案内人

夢の案内人

悩んでいる時に目を閉じると、必ず見える君。
小さい頃からずっとずっと、悩みながら眠ると見えてきた。
ぼんやり、ぼんやり。はっきり見えない。
小さい頃よりは微妙にはっきりなのかもしれないが、それでも、見えない。

でも決して近づいて来ようとはしないし、
僕も近づけない。

なんなんだい?君は誰なんだい?
目を閉じている僕にはそれも聞けなくて。

どんな些細な悩みだっていい。
君に会う条件は悩むだけ。

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buzz

buzz

テレビをつける。
そこで笑う人を見て俺は、音を立てて缶ビールを開ける。

俺の近くにいたはずのあいつがそこにいた。

俺がかつて憧れた「人気者」になって。

バズるなんて言葉があるが、言うなればその人気者はしっかりバズった。
今流行りのショートムービーを上げるアプリで、ネタをして。
俺にはよくわからなかったが、世間にはとてもウケたらしい。

まぁ、こういう所だよな。俺が世間とズレてるのは。

あ、

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私は小説が書きたい

私は小説が書きたい

――まぁさ、こういうの書ける人って俗に言う「天才」だよね。――

人の前で、格好つけて言ったその言葉で片付けた、
大事にしてきた自分の夢を、
あの時、追わなかったことに酷く後悔していて。

目の前にあるショートショート作品集を手に取り私は表紙の埃を払った。

――書いていればきっといつか書けるようになる。――

そう思って書き続けた日々が私にもあった。

その日その日目にしたものをメモして、それを

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夢のような世界

夢のような世界

雨が降る外。男女がソファーに座らずもたれ掛かり、テーブルを前にして横並びで話をしている。
女は本を読んでいる。

「俺は夢のような世界に生きたい」
「例えばどんな?」
「わたあめで出来た雲の上の世界」
「わお、ファンタジー。可愛いね、サンリオみたい。他には?」
「俺自身がめちゃめちゃ強くて他の誰も俺に勝てない世界」
「ジャンプみたいだね。でもそれ絶対天涯孤独だよ。はい、次」
「はい次て。まぁいいけ

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飲み物達は夢を見る

飲み物達は夢を見る

今日も選ばれなかったなぁ

誰かの救世主になりたいと思って生まれた俺だったけど、日の目を見ることなくここでひんやりし続けて早2ヶ月だ。

俺は賞味期限というものが早いわけじゃないからそんなに入れ替えはないらしい。
そもそもそんなに入れ替えられるやつなんていないんだが。

「よぉ新入り」
「……」

とても人気な飲み物には遂に無視されるようになった。
昨日のこいつはめちゃめちゃ話してくれたんだけどな

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立ち入り禁止というルール

立ち入り禁止というルール

いざ!立ち入り禁止の領域へ!
という自分の覚悟とは裏腹に、どうしてもそこには手が出せない。

その立ち入り禁止のルールを破り、自分の知らない世界に足を踏み入れたら最後、何が起こるかわからない不安や勝手にその先の自分に見据えた恐怖に、いつも足止めをされる。

俺は、変わりたい。
自分としても、こんなしがないサラリーマンのまま人生を終えたくない。
そう、思っている。

だけれど、どうしても踏み出せない

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消せない火、消えない火

消せない火、消えない火

今、家を燃やすあの火を消すことは容易く出来ることではないのに
何故なのだろう
夢を追い求め追い求め追い求め追い求め漸く自分の胸に点いた火が、こうも容易く消えてしまったのは

僕は家を燃やしました
もう誰もいないあの家を
僕は家を燃やしました
もう何も残ってないあの家を

幼い頃口にした格好いい消防士という夢は
はるか遠い過去に置いてきたようで
目の前で燃え盛るあの火を見ても、ちっとも消さなきゃとい

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