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推進中のプロジェクト問題提起、何故人は「躊躇」する?

プロジェクトに問題が発生した(発覚した)時、「もっと早く分かっていたら」とか、「もっと早く対処が出来ていたら」といった、後の祭り的な愚痴をよく見聞きするのではないでしょうか。
人は、プロジェクトで発生しそうな課題・問題に直面した時、「気づいた時点で声を上げる」ということに対し、何故か「躊躇」してしまう傾向に陥ることがあります。そうしたことについて、単に「個人の性格、気づきの問題だ」ということで片づけてしまいがちですが、果たして本当にそれだけで良いものでしょうか? 
今回、何故「躊躇してしまうのか」ということについて、「個人の問題だけに帰結させて良いのか」という観点で考察したいと思います。

※「報告の在り方」(第6回~第8回)という記事で、本稿に関連する内容を掲載しています。併せて参照下さい。(下部にリンクしています)


1.躊躇する要因

報告や問題提起を行う際に、「このタイミングで発言すべきか」といった状況になったことはありませんか。特に、複数のチームで分担して対応しているプロジェクトにおける、合同進捗会議などような場で「他のチームに関することに質問することさえ躊躇してしまう」というような状況です。「しない方が良い空気」というような雰囲気といっても良いかもしれません。
何故、躊躇するようなことが起きてしまうのでしょうか?
そこで、報告時や会議などの場における「意識」について、考えてみます。

1.1 報告時における抑制意識

「問題や課題を抱えたプロジェクト」における報告や、報告書を作成する際、以下ような「意識や思い、認識」を持ったことはないでしょうか。

●ここで怒られたくない。
●ここで介入されたくない。(煩わしい)
●まだ大丈夫だ。(解消し得るレベルだとの認識)
●誰かを貶めたくないし、貶めているような印象を持たれるのはいやだ。
●言う必要はないと思う。(思いたい)
●交代させられたりしたら、たまらない。
●現物を確認しなくても。(「やっている」「出来ている」と聞いている)
●裏付けが、十分に揃っていない。(時間切れ、報告から抜いておこう)
●裏付けを求められると面倒。(定量化が出来ていない、してない)
●課題に対し、対策案を立てられていない。(突っ込まれたくない)
●泣き言は言いたくない。
●何もしてくれそうもない。(言っても無駄感)
●誰かがやってくれるだろう。(役割外、分担外だし)

などなど

1.2 会議の場などにおける発言抑制意識

進捗会議などの場で、他のチーム報告内容に対し、疑問点などが生じた際、以下のような「意識や思い、認識」を持ったことはないでしょうか。

●自分たちのことに対して、他のチームから言われたくない。
●だから、自分たちも、他のチームについて発言するのは控えよう。
●会議時間を延ばしたくない。
●言い出しにくい空気を感じる。
●出しゃばりと思われたくない。
●気にはなっているが、噂話の域を出ていない。(裏付け不足感)
●自分たちの範囲をしっかりやっていれば、それで良い。
●役割範囲外のことだ。(所詮、他人事)
●この場を何とか切り抜ければ。(その場しのぎ)
●後れを取っているようには、思われたくない。
●上手くやっているように思われたい。(干渉されたくない)

などなど。

以上、思い当たられる点が無いでしょうか。このような意識や認識が、正しい報告、問題提起を「躊躇」させているのではないかと考えています。
今一度、躊躇させる要因について、振り返ってみて下さい。
システム開発の場(それだけでは無いと思いますが)では、問題点や課題を最小化するために、これまで色々と「手法や技法」が生み出されてきたわけですが、未だに解消されず、解決のタイミングを逃し、後手を踏むということが繰り返されているというのが実態ではないでしょうか。

2.解消に向けた取り組み

プロジェクトを推進してきた人であれば、多かれ少なかれ、1.に記したようなな「躊躇」することを経験しているのではないかと思います。
そこで、以下のような「意識や思い、認識」での取り組みを徹底、指導していくことが重要と考えています。

【望ましい行動様式】
●気になったことは、そのままにしない。
●マネジメントは、「性悪説」で考える。(人は、誤解やミスがつきもの)
●怒られる事象こそ、避けずにいち早く公表する。(責めない)
●失敗することを恐れない。
●傲りを捨てる。(傲慢にならないこと)
●臨機応変さを持つ。
●聞く耳を持つ。(独りよがりにならない)
●報告内容を信じすぎない。(確認を怠らない)
●他のチームのことでも状況把握に努める。(良い意味でのお節介)
●相手が確実に理解したかを確認する。(「…のハズ」は禁句)
●意にそぐわないことでも、進言すべきことは発言する。
●自分なりの「考え」を常に持つ。(流されない、鵜呑みにしない)
●ただし、固守し過ぎない。(意地を張り過ぎない)
●常に、第三者的な感覚で物事を見る。(冷静さを失わない)
●その場しのぎをしない。
●伝えるべき事象は、背景を含めて伝える。(事象だけにしない)
●プライオリティー感覚を常に持つ。(急ぐべきことかを意識する)
●煩わしさ感を捨てる。(フォローを怠らない)
●エスカレーションをする癖をつける。(抱え込まない)
●目配りを怠らない。 (思わぬところに落とし穴)
●常に、俯瞰的な見方をする。(自身の位置づけを意識する)
●重箱の隅を突くことも必要。(何が些末かは人次第)

などなど

ということで、取るべき「行動様式、意識」ということについて提示してみましたが、一番大事なことは、何事においても、「躊躇」する気持ちを捨てさせることができるかということに尽きるでしょう。
そういう意味で、

発言することを躊躇させない「環境、雰囲気作り」を行うこと

が最も重要なことかもしれません。
個人の性格、実は「能力」も含めてですが、その人が置かれた状況(ex.進捗)や環境(空気感)が複雑に絡まっていることは言うまでもありません。少なくとも、そうした「空気感を生み出さない」取り組みが重要と考えています。
 

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