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システム投資を低く抑えられた「性善説」は、もう通用しない!①

これまで、日本のシステム構築は、「性善説」を「是」とした取り組みをしてきたのではないかと考えています。作る人も、使う人も、「人を信じる」「信じられる」ということを前提に、対応してきたのではないでしょうか。それが、許容され、許容できる、すこぶる良いビジネス環境下にあったような印象を持っています。ドメスティックな世界で、ビジネスを成り立たせることが出来る(日本の人口規模)時代であったからとも、言えるかもしれません。そのことにより、出来るだけのリスクを考慮 *1するべきというグローバルでの常識に対処することなく、システム投資に掛かる時間やコストを抑えられるという「一石二鳥」の取り組みを生んできたのではないでしょうか。(日本人はそんなことはしないハズ、社員にはそんなへそ曲がりな考えや行動をする人間はいないハズとかとか)
さらに、「性善説」で取り組む理由として、マネジメント面で「自分の負荷を下げられるということ *2」も挙げられます。実は、これが一番の理由かもしれません。
本テーマでは、2回に分けて考察したいと思いますが、まず、リスク考慮に対する「1.これまでの考え方」について考察し、次回、「2.欧米との違い」と「3.これからの在り方」ということについて考察します。

*1:出来るだけのリスク考慮
「故意に悪さをする人はいる(ハッキングは、自分の才能を自覚できること)」ということや、「人の『うっかり、誤解、ミス』などは避けられない」ということから起こるリスクを前提とした対応。ハッキングが、ビジネスとみなされるような世界の出現への対応。などなど

*2:自分の負荷を下げられること
自分が考えていることを理解してくれているハズ、言ったことは必ずやってくれるハズと信じることで、マネジメントの負荷(チェック、フォロー、指導などに掛かる手間暇)を下げている。


1.これまでの考え方

日本では、まさに「性善説発想」でコト(システム構築プロジェクト)を進めてきましたし、進めることが出来てきたと考えています。特に、リスク面(不測事態)への取り組みにおいて、作る前から「リスクがあるかも」と考えて臨むことに対し、顧客サイドにも、作る側にも「忌避感」のような思いを持っていたように思います。
特に、マネジメントリスクに対し、予算計上しようとすると、自分たちが作ることに「自信が無いからじゃないの」と言われ、それに対して返す言葉が無いという感じでした。
また、トラブルが発生した際にも、「事前に考え、対応をしておけば」良かったと考えるより、「不測の事態」「予測しえない事態」だといって、あたかも「事前に、誰も予想できなかったことだ」という言い訳方をし、「そうではないだろう」と思いながらも、「しょうがない」としてしまう傾向があるようにも思います。そこには、日本人らしい「誰かの責任を明確にし、追求することを嫌う性格(?)」にあるような気もします。これも、性善説からくる発想の一つかもしれません。

【日本における考え方】
・「事前」に、時間とコストを掛ける必然性に対する意識が薄い。
 (ドメスティック発想でコトを進める)
・発生した時点で、対応すればよい的な発想。
 (マレなのだから、発生しなければそれで済む)
・事後より、今お金がかかることを避けたがる。
 (進行中での予算増、交渉を嫌う)
・遡って、個人の責任を追及するようなケースは稀。
 (曖昧にして終わらせる傾向大)
・異動が当たり前。
 (発生時、造った人はもうおらず、責任を曖昧にすることができる環境)
・「後で対処する」方がお金がかかることは分かっているが、そうしない。
 (事前派は、少数派)
・成功型気質|《 *3》が強く、「失敗」とされる(する)のを嫌う。
 (この際は、時間もお金も使う)

【日本における取り組み意識】
・基本的に「話し合い」で解決しようとする。
 (「話し合い」を契約条項として記載 *4
・ゴメンナサイを言ったら、分かってくれるハズ意識。
・1か0で事を進めるのを、あまり好まない。
 (わかってくれ、行間を読んでくれて当たり前と考える感覚)
・役割分担や責任の所在について、形式的な認識。
 (「話し合い条項」的な意識でいる傾向)
・何事も、コトが起こったら考えましょうという意識。(事後主義)
・契約を盾にするより、「何とか分かってほしい、分かってくれるハズ」という意識。(対立回避)

現在のビジネス環境は、すでにドメスティックでは立ち行かず、インターネットが不可避な時代 *5にあって、これまでのような考え方、取り組み方で対応しえないということは周知のことになりつつあるとは思います。しかし、まだまだ不十分なのが現状ではないでしょうか。

次回、欧米との違いを含め、その対策について考察したいと思います。


*3:成功型気質
最近もよく聞くと思いますが、「当初予算の2~3倍もかけたのに、完成せず」「賠償問題に発展」といった話の根幹は、この気質抜きには語れないと考えています。まさに、進行中の事態(構築中)に対して、責任者は何とかしなければとの思いが優先し、お金をかけ続ける傾向が高いということ。さらに、事業における目標達成まで投資を続け、傷を広げる結果を招いてきたということに対し「実行者を信じたい」という寛容さ。

*4:契約条項として記載(日本の契約書)
第〇〇条 (協議事項)本契約に記載のない事項または本契約の条項の解釈に疑義が生じたときは、甲乙双方速やかに協議の上解決する。

*5:インターネットが不可避な時代
例え、ビジネス対象が国内中心であっても、また利用者が国内のみと規定していたとしても、グローバルなアクセスを回避することは難しくなっているということは既に周知のハズですが、そこまでの対処が十分でないのが現状では無いでしょうか。(ドメスチック発想からの脱却が不可避)

2.欧米との違い

3.これからの在り方


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