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弱おじの本棚

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2024年4月の記事一覧

これはエジプトミステリーであり、エジプト群像劇〜「ファラオの密室」を読んで〜

これはエジプトミステリーであり、エジプト群像劇〜「ファラオの密室」を読んで〜

白川尚史さんの「ファラオの密室」を読んだ。

ミステリーの賞を受賞されている作品で、謎解きを楽しみながらワクワク感と共に一気読みできた。

まず、設定が変化球すぎて面白い。
エジプトを舞台にした小説ってはじめて読んだし、未知の設定がすんなりと腑に落ちていくあたり、筆者の力はすごいなあと感心してしまった。

ミステリー要素はもちろんだが、登場人物の人間らしさがとても好きだ。
友人や家族との人間関係に

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全く違う世界に生きる、私たちと同じな人間 〜「レーエンデ国物語」を読んで〜

全く違う世界に生きる、私たちと同じな人間 〜「レーエンデ国物語」を読んで〜

多崎礼さんの「レーエンデ国物語」を読んだ。

恋心、親子の愛、何かを成し遂げるために生きること。
ファンタジーだけど、私たちが生きるリアルな世界と確実にリンクする心情がしっかりと描かれている。

娘を大切に思う父の姿に感情が移入する。
誰かのために生きる。
結局、どの世界でも、それが虚構の世界でも、これ以上の幸せはないのだろう。

生きていれば色々なことがある。
それらが紡がれ、一つの物語が完成さ

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人生を能動的に楽しんでいこう。〜「みなさんのおかげです」を読んで〜

人生を能動的に楽しんでいこう。〜「みなさんのおかげです」を読んで〜

木梨憲武さんの自伝 「みなさんのおかげです」を読んだ。

人生を楽しんでいくコツみたいなのを学べた気がする。

まずは前提。
人生を楽しんでいこうという姿勢。
楽しいことが向こうから訪れるのを待つのではなく、こちらから追いかけていく。
能動的に人生を楽しんでいく姿勢が大切だ。
楽しもうという決意がない限り、人生なんて楽しくなるはずがない。
好きに生きよう。やりたいことをやっていこう。

そして大切

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ホラーでありミステリーであり普遍的な愛であり 〜「をんごく」を読んで〜

ホラーでありミステリーであり普遍的な愛であり 〜「をんごく」を読んで〜

北沢陶さんの「をんごく」を読んだ。

ホラー・ミステリーの賞をとられている作品で、文体が美しく最後まで楽しく読ませていただいた。

読み方がずれているかもしれないけど、本書を読んで私が感じた最も大きな感情は、「隣にいる大切な人を大切にしよう」ということだ。

亡くした妻が幽霊となって現れる設定のお話を読んで、当たり前だが、私も大切な人もいつか必ず死を迎えるんだよなと実感した。

大切な人が幽霊とな

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疾走感が気持ちいい。座って読んでいるだけなのに。 〜「解答者は走ってください」を読んで〜

疾走感が気持ちいい。座って読んでいるだけなのに。 〜「解答者は走ってください」を読んで〜

佐佐木陸さんの「解答者は走ってください」を読んだ。

率直な感想。
読んでて気持ちいい。清々しい。
自分が走っているような感覚。
実際は座ってページを捲っているだけなのに。

色々な世界線をタイトル通り疾走して飛び回る。
時折り、どこに自分がいるのかわからなくなったりする。
それさえも気にならないくらい、心地よい。ワクワクする。楽しい。

小説の新たな楽しみ方を教えてくれる。
まるで音楽を聴くかの

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内面を描くから小説は面白い。〜「同志少女よ、敵を撃て」を読みました〜

内面を描くから小説は面白い。〜「同志少女よ、敵を撃て」を読みました〜

逢坂冬馬さんの「同志少女よ、敵を撃て」を読んだ。

戦争をテーマに取り扱った小説。
アニメや映画では戦争の悲惨さや残酷さを映像で派手に表現するが、そこに存在する人間一人一人の心のうちを微細に表すことはできない。
小説にできないことはもちろんあるけど、本書は小説の特徴をふんだんに活かして、一個人の内面の動きから戦争の醜さや憎むべき部分を見事に表現している。

戦地に赴く少女。
最初は戸惑いながらも、

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面白きこともなき世をオモロく。〜「ユーモアは最強の武器である」を読みました〜

面白きこともなき世をオモロく。〜「ユーモアは最強の武器である」を読みました〜

「ユーモアは最強の武器である」を読んだ。

笑いって大切だよなと、改めて感じた。

会社にユーモアを持ち込むのって、なかなかしんどい人もいると思う。
冗談なんて通じない、殺伐とした環境の中で仕事をしている人もいるだろう。

できる部分から、少しずつ。
ユーモアの輪を広げていけたらいい。
嫌な仕事を振られた時に、軽い皮肉を交えながら笑いを生み出せたらいい。
気まずいお願い事をする時、ユーモアのオブラ

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