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弱おじの本棚

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2023年10月の記事一覧

追いつめてくる人は追いつめられている人。〜「愛を知らない」を読んで〜

追いつめてくる人は追いつめられている人。〜「愛を知らない」を読んで〜

一木けいさんの「愛を知らない」を読んだ。

感動した。
「追いつめる人って、たぶん追いつめられてるのよね」
というセリフにめちゃくちゃ共感した。

子供を育てる大変さ。
愛されたい。愛してもらえない。憎い。
愛すべき存在なのに、憎んでしまう。嫌いになってしまう。
そんな矛盾の苦しさが、登場人物たちからすごく伝わってきた。

どうでもいい人にどう思われようが、ダメージはない。
大切な人に拒絶されたり

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変な私を肯定してくれる、素敵な物語 〜「父と私の桜尾通り商店街」を読みました〜

変な私を肯定してくれる、素敵な物語 〜「父と私の桜尾通り商店街」を読みました〜

クセがすごい。

千鳥のノブさんじゃなくても、きっとそう呟く。

登場人物のクセがすごいんじゃ。
でもそのどれもが愛おしいんじゃ。

今村さんの世界観はある意味ぶっ飛んでいるが、そこに何かしらの共感が生まれてしまうのは、きっと自分のどこかにもそんな異常さが存在しているからかもしれない。
異常な自分だからこそ、異常な登場人物たちが喜んだり苦しんだりする姿に感情を動かされる。そう、他人事には思えないの

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「寝苦しい夜の猫」を読みました。

「寝苦しい夜の猫」を読みました。

かまいたち 山内健司さんの「寝苦しい夜の猫」を読んだ。
山内さんのこれまでの人生を深く知れて、とても楽しく読むことができた。

かまいたちが好きだ。
山内さんと濱家さんの掛け合いがたまらなく面白い。
テレビに出てたら見てしまうし、YouTubeも見てる。こうしてエッセイも買ってしまう。

山内さんは相方想いで、家族想いなとても心の優しい人なんだなと思った。
バラエティでは「あえて」嫌われキャラを演

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悪いことはしないようにしよう。どうせバレるから。〜「あなたには、殺せません」を読みました〜

悪いことはしないようにしよう。どうせバレるから。〜「あなたには、殺せません」を読みました〜

石持浅海さんの「あなたには、殺せません」を読んだ。

殺人を計画する人が事前に駆け込み寺のように相談に行く設定。
相談員が次々と殺人計画を論破していく姿に、完全犯罪の難しさを感じたし、悪いことすればいずれはバレるんだなと当たり前のことを再認識した。

同時に、悪いことを企てる人は盲目になっているとも言える。
頭の中で完璧なシナリオを描いていても、第三者から見たら実はツッコミどころ満載だったりする。

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この物語と出逢えたのは、コロナの「おかげ」だったりする。 〜「この夏の星を見る」を読みました〜

この物語と出逢えたのは、コロナの「おかげ」だったりする。 〜「この夏の星を見る」を読みました〜

辻村深月さんの「この夏の星を見る」を読んだ。

コロナ禍を舞台にした、中高生の青春物語。
あの時期を思い出して苦しくもなったし、今普通に日常を過ごせていることが奇跡的にさえ思えた。

コロナ禍を過ごした学生にとっては、「奪われた」時期だったのだろう。
普通の青春を謳歌することができず、やりきれない気持ちを抱えた人も多いはずだ。

本書の登場人物たちもコロナ禍に振り回されて苦しみを味わうが、コロナ禍

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時に曖昧に。時に明瞭に。バランスよく生きていたい。 〜「愛の夢とか」を読みました〜

時に曖昧に。時に明瞭に。バランスよく生きていたい。 〜「愛の夢とか」を読みました〜

読書をしていると、思いもよらない言葉との素晴らしい出会いがある。
だから僕は読書が好きだし、読書をやめられないのかもしれない。

川上未映子さんの「愛の夢とか」を読んだ。
7つの短編が収録されており、そのどれもが美しい表現で紡がれていて、読んでいて心地がよかった。

きっとサビの部分ではないのだろうけど、めちゃくちゃ印象に残ったフレーズがある。

「どうしてあなたはそんな前向きに考えられるの」

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色々な色が混ざり合う素敵な世界 〜「ノウイットオール」を読みました〜

色々な色が混ざり合う素敵な世界 〜「ノウイットオール」を読みました〜

森バジルさんの「ノウイットオール」を読んだ。

ジャンルの異なる短編が収録されていて、それらが同じ舞台で繰り広げられ、重なり合っていくという素敵な構成。

特に、漫才をテーマにした青春小説のパートが好きだった。
作者さんはめちゃくちゃお笑いを愛しているんだろうなと伝わってきた。

最後の恋愛短編も素敵だった。
言葉の素晴らしさを教えてくれる物語だった。

普段は手に取らないジャンルの短編を読むこと

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大切な人へ思いを言葉にして伝えようと思えた。 〜「クスノキの番人」を読みました〜

大切な人へ思いを言葉にして伝えようと思えた。 〜「クスノキの番人」を読みました〜

東野圭吾さんの「クスノキの番人」を読んだ。

とてもハートフルで、その中でもミステリー要素もふんだんに盛り込まれており、最後まで楽しく読めた。

僕が誰かに伝えたい「思い」ってなんだろう?と考える。

ありがとう。大切だよ。感謝しているよ。
伝えたい感情、伝えたい人はいるし、伝えなきゃいけないとも思うけど、いざ伝えようと思うと躊躇したりする。

物語のようにクスノキが存在して、僕の思いが口にせずと

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僕らはまだゲームの途中。一発逆転だってあるかもしれない。〜「カード師」を読みました〜

僕らはまだゲームの途中。一発逆転だってあるかもしれない。〜「カード師」を読みました〜

この世界は理不尽なことばかりだ。

どんな確率だよ!
と嘆きたくなるような、奇跡的な不幸が身に降りかかったりする。

でも、僕たちの人生はまだ途中だ。
今日を乗り越え、明日はまたカードをめくることができる。

明日めくったカードもクソみたいな中身かもしれない。
でも、とんでもない素晴らしさを含んだカードである可能性だって、否定はできない。

可能性がゼロじゃない限り、カードをめくる意味はある。

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