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#モロッコ

ベルベルの心を備えよ(20)なんてことない最後の日【アル・ジャディーダ】

ベルベルの心を備えよ(20)なんてことない最後の日【アル・ジャディーダ】

 12/27、20日目。いよいよ明日、日本に帰る。PCR検査も陰性だったし、準備は万端だ。
 さて、今日は何をしよう?私は思いあぐねて、Google mapを開いた。カサブランカで見るべきものは見たし、日帰りで、簡単に行けて、面白そうな場所がないだろうか。
 悩んだ結果、私は「El Jadida(アル・ジャディーダ)」に訪れることにした。
 それほど有名な観光地ではないと思う。偶然、モロッコに訪れ

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ベルベルの心を備えよ(18)まるでおひめさまになったみたいに【シェフシャウエン】

ベルベルの心を備えよ(18)まるでおひめさまになったみたいに【シェフシャウエン】

 12/25、18日目。シャウエン三日目だ。朝食は宿の屋上のテラスで食べる。スタッフの騒がしさには閉口するが、屋上のテラスの景観の良さはさすがに素晴らしかった。

 まずは荷物をパッキングする。というのも、その日の夜はホテルを変更することにしたのだ。最終日はシャウエンからカサブランカにバスで移動するのだが、出発時間が7時と早朝で、タクシーの入ってきにくい旧市街に宿泊するメリットがないのである(それ

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ベルベルの心を備えよ(16)造られたまち【シェフシャウエン】

ベルベルの心を備えよ(16)造られたまち【シェフシャウエン】

 12/23、16日目。シャウエンに向かうバスは11時出発で、のんびりとした朝だった(ちなみに、フェズとシャウエンをつなぐバスは人気路線なので、早めに予約することをお勧めする)。絶品のムスンメン(モロッコのパンの一種)を名残惜しく味わって、Bossと握手を交わし、私は宿を出た。
 フェズのバスターミナルは少し離れていたので、道路でさっとタクシーをつかまえる。さあ、料金交渉だと腕まくりをして乗り込ん

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ベルベルの心を備えよ(15)奇跡の高学歴ツアー【メクネス・フェズ】

ベルベルの心を備えよ(15)奇跡の高学歴ツアー【メクネス・フェズ】

 12/22、15日目。今日は、フェズの近郊にある古都、メクネスに向かう日だ。何時に出発するかは相変わらずわからなかったが、8時に朝食を食べ、ミントティーを飲ながらまったりしていると、突然「車が来た」とBossに言われ、慌てて準備してRiadを出発した。
 おそらく他のRiadでゲストを拾ってきたのだろう、少し大型の車の中には、先客が4人乗っていた。きゅっと細い目に刈り込まれた短髪の中華系の男性、

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ベルベルの心を備えよ(14)長い長い一日、初めての逃走【フェズ】

ベルベルの心を備えよ(14)長い長い一日、初めての逃走【フェズ】

 12/21、14日目。早朝4時、Fesに到着した(悪いことに、30分ほど早く着いてしまった)。Fesは、モロッコの中でも比較的治安が悪いと聞いていたが、確かにバスを降りた瞬間に待ち構えていたドライバーたちの雰囲気はかなり「微妙」だった。目を合わせないように、バス停近くの大きな駅舎に逃げ込む。
 大きなリュックを背負った女性から、「日本人ですか?」と話しかけられた。話してみると、彼女は日本に住んで

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ベルベルの心を備えよ(13)そしていきものになる【サハラ、ハッシラビアッド】

ベルベルの心を備えよ(13)そしていきものになる【サハラ、ハッシラビアッド】

 12/20、13日目。目が覚めると、まだ空に夜がくすぶっていた。眠る直前に見たオリオン座が真反対の位置に移動していて、どっちがどこなのかわからなくなる。
 さすがにまだ眠かったので、オリオン座の写真を数枚撮り、もう一度テントに戻って目を閉じた。

 次に目が覚めた時には、少し薄明るくなってきていた。朝の気配がする。
 テントを抜け出すと、物陰でぶつぶつとつぶやく声がした。驚き、目を凝らすと、闇の

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ベルベルの心を備えよ(12)右も左もわからない【サハラ・ハッシラビアット】

ベルベルの心を備えよ(12)右も左もわからない【サハラ・ハッシラビアット】

 12/19、12日目。砂漠での一晩だったが、寝る場所は一人ずつ個室だった上に、ふかふかした暖かなベッドが準備されていたので、まったくもって快適な朝だった。
 脳内に住む野生の自分が「もっと寒くて震えながら砂まみれで目覚めるようなギリギリの世界はないのか」とわんわん吠えていた。

 みんなでラクダに乗り、デューンに昇って朝日を眺めた。朝焼けに照らされて、遠くの街の影がぼんやりと眠そうにみえた。低く

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ベルベルの心を備えよ(11)海のような砂【ハッシラビット、サハラ】

ベルベルの心を備えよ(11)海のような砂【ハッシラビット、サハラ】

 12/18、11日目。いよいよ砂漠に向かう。出かける前に、真っ黒に焼けた小柄なおじいさんが声をかけてきた。トドラで会ったノマドの長老を思い出させる薄い色素の目で、片方の目が少し変な方を向いた、いわゆるガチャ目のおじいさんだった。彼は私を手招きして呼び、小部屋に並べられたたくさんのターバンやジュラバ(モロッコの伝統衣装)を見せてくれた。旅行客たちはみんなここで好きなターバンとジュラバをレンタルし、

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ベルベルの心を備えよ(10)峡谷OUT-サハラIN、太鼓と夜【ティネリール、ハッシラビット】

ベルベルの心を備えよ(10)峡谷OUT-サハラIN、太鼓と夜【ティネリール、ハッシラビット】

 12/17、10日目。トドラの朝もいよいよ最後。あまりお腹がすいていなかったので、冷蔵庫から勝手にザクロを出してパクパク食べた。こんな我が物顔で生活できるのも今日が最後だと思うとすごく悲しい。同時に、このモロッコの旅がまだ10日目ーーようやく折り返しくらいであることに、改めて驚く。

 アリ・ババは朝からロッククライミングにハリドゥと出かけていった。バスは夕方の予定だったので、ホステルの前の畑を

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ベルベルの心を備えよ(9)アリ・ババのお出迎え、トドラ最後の夜【ティネリール・トドラ】

ベルベルの心を備えよ(9)アリ・ババのお出迎え、トドラ最後の夜【ティネリール・トドラ】

 12/16、9日目。何度見ても美しい朝に、感嘆のため息をつく。
 今日は、ついに新しいゲストが来るらしい。私はすっかりスタッフの気持ちになって、送迎の手順なんかを確認した。お迎えはヒシャムが行くそうなので、ハリドゥを誘い、宿の前の森を散歩することにした。
 ハリドゥは、いつものようにひらひらと、森の中の小さな道を、まるで道しるべがあるように迷いなく歩いていった。どこかに流れている小川の水音に合わ

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ベルベルの心を備えよ(8)羊に水を飲ませること、絨毯の似合う家に住むこと【ティネリール・トドラ】

ベルベルの心を備えよ(8)羊に水を飲ませること、絨毯の似合う家に住むこと【ティネリール・トドラ】

 8日目。12月15日。トドラに限らないことだが、モロッコはとかく毎日空が青すぎるほど青い。日の光で起きて、いつものように部屋のすぐ外にあるテラスで深呼吸。昨晩から干していた洗濯物はカラカラに乾いていたが、ハリドゥの干し方が控えめに言ってかなりダイナミックだったので、おばあちゃんの目じりみたいにしわくちゃになっていた。まあ、細かいことは気にせず着る。
 1階のソファではいつも通りヒシャムがいたが、

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ベルベルの心を備えよ⑦岩登りとローカルなセイカツ【ティネリール・トドラ】

ベルベルの心を備えよ⑦岩登りとローカルなセイカツ【ティネリール・トドラ】

 7日目。12月14日。朝起きていつものストレッチをし、薄暗い階下に降りた。ヒシャムは1階のソファで寝ていた。おはよう、よく眠れた?彼は実に眠そうに私に聞いた。ヒシャムはあまり眠れていなそうだね、と答えると、久しぶりにここで寝たから、よく眠れなかったんだと、少ししわのある目じりを下げて笑った。
 モロッコの多くのホステルでは、いつでもゲストが帰ってこられるように、何かあったときに対応できるように、

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ベルベルの心を備えよ⑥トドラ渓谷との圧倒的遭遇【ティネリール・トドラ】

ベルベルの心を備えよ⑥トドラ渓谷との圧倒的遭遇【ティネリール・トドラ】

 6日目。12/13。7時くらいに目が覚める。例のごとくパンにパンを合わせる炭水化物フェスティバルが朝食で開催されたので、すっかり満腹になってしまい、腹ごなしに朝の散歩に出かけることにした。少しだけ宿の周りを歩くつもりで、シャワー用の便所サンダル(百均で買ってきたもの)をつっかけて出たのだが、歩いているうちにだんだん気分が乗ってきたので、20分ほどかけて遺跡まで歩くことにした。
遺跡の隣に小高い丘

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ベルベルの心を備えよ⑤果てない砂漠へのファーストステップ、遊牧民な日々【ワルザザード】

ベルベルの心を備えよ⑤果てない砂漠へのファーストステップ、遊牧民な日々【ワルザザード】

  12月12日。5日目。すっかりマラケシュに慣れ切ったせいで出発時間を見誤り、バス出発5分前にターミナルに到着するというギリギリプレー(何も伝えていなかったのに、出がけにオーナーが温めたパンを朝食に持たせてくれてほっこりした)。
 今日乗るのは、初めてのSupratoursである。目指すは砂漠の入り口といわれる都市--ワルザザードだ。
 観光客が「サハラ砂漠ツアー」に行く手段は、おおむね2択に絞

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