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国民主権と国民皆兵は一対の概念

徴兵制というと一見民主主義とは程遠いものと考えられがちだが、実際には民主主義という政治制度は徴兵制から始まっているとも言える。絶対王政下の時代の軍隊は国軍ではなく、王個人が雇った傭兵(民間の戦争屋)であり、必ずしも民のための軍ではなかった。それがフランス革命で民が王から主権を簒奪し、そこで初めて「国民主権」「平等」「人権」といった概念が生まれてくる。

フランス革命で王妃マリー・アントワネットが処刑されると王妃の祖国であるオーストリアと戦争が勃発。まだ国軍ではなく貴族中心の戦意の低い軍隊だったのでフランスは劣勢に立たされる。そこで革命政府が祖国の危機を訴え各地から義勇兵が集まり、それが国軍の起源となる。尚、その際義勇兵が進軍の際歌っていたラ・マルセイエーズが後のフランス国歌にもなる。それまで王のためにカネで雇われた軍隊でしかなかったのが、王がいなくなったことで民で作る軍隊に変質した。民の側が直接軍事や政治に参画するようになったことで「民主主義」「国民」という概念も初めて生まれてくる。「王」の国でなく「民」による国だから「国民国家」となる。

日本においても概ね同様で、封建体制である江戸幕府が政権返上すると、明治政府は武力を武士だけが独占する身分制を廃して「四民平等」とし、国民皆兵とすることで、それまでにしか帰属意識がなかったのを「国民」という意識に作り変えた。「国民」をつくるため、方言は残しつつ共通語を作ったりもした。国民主権国民皆兵は歴史の中で一対の概念として誕生したものでもあり、それが近代国民国家の起こりでもあるが、そういう意味ではアメリカに主権を奪われている戦後日本は主権国家でないだけでなく、正確には民主主義ですらないことになる。

尚、近代民主主義の思想的なルーツであり、フランス革命にも多大な影響を齎したジャン=ジャック・ルソー社会契約論(第2編第5章)の中で以下のように書いている。

統治者が市民に向って『お前の死ぬことが国家に役立つのだ』というとき、市民は死なねばならぬ。なぜなら、この条件によってのみ彼は今日まで安全に生きて来たのであり、また彼の生命は単に自然状態からの恩恵だけではもはやなく、国家からの条件つきの贈物だからである。

社会契約論(第2編第5章)

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