ベタな恋愛ものが書きたくて
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「イズミさんは……」
「ううん、ワイズミ。和泉って書いてイズミさんが多いみたいだけど、わたしのはそのまんまワイズミって読むの。和泉桜。よろしくね」
そう言って彼女は笑った。
僕の大学にはクラスなんてものはあってないようなもので、だから講義ごとに全然知らない人たちと顔を合わせることになるのだが、いつもは先生が一方的に話をするだけだから学生間の交流は皆無に等しかった。ところがなんの気まぐれか、今日は数人で協力して行う小課題が出され、たまたま席が近かった者どうしで組むことにな