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パン屋さんの話

Twitterとかインスタを見てくださっている人ならもしかしたら知ってくれているんじゃないかなぁと思っているんですけど、わたしはパン屋さんが大大大好きです。ついこの間も、「はるさんと言ったらパンのイメージ」なんて言われたばかりです。(ちょっと嬉しかった。)

どうしてこんなに好きなんだか自分でもさっぱりですが、とにかく好きです。以前から好きでしたけれども、高校生の頃のわたしはここまでパンパン騒いでいなかったはずなので、どうして突然……?と不思議でした。でも考えてみたらふっと思い当たる節がありまして、おそらくきっかけは去年の春頃、同じ大学のできたてほやほやのお友達と制作した、あのアンソロジーだったんじゃないかと。

懐かしい、あの頃は授業が全部オンラインだったので、その分SNSで同じ大学の人と繋がるしか手段がなかったんです。それでもあんなにたくさんの人とお話する機会なんて今までなかったから、とても新鮮で、なんだかんだ楽しく過ごしていたように思います。そんな中で、特に仲良くしてくれていたお友達から企画のお誘いをもらい、二つ返事でOKしました。すぐにTwitterを駆使して書いてくださる方を募って、さらに素敵な表紙まで描いていただいて、そうしてみんなでデジタル媒体の短編集を制作、発表しました。早いもので、あれからもうすぐ1年経ちますが、完成したときのあの高揚感は、思い出そうとすればすぐに心に戻ってきてわたしの口角を緩ませるんです。

アンソロジーの参加条件はただひとつ、パンが出てくる物語であることでした。寄せてくださった作品を、ちょっとした校正を兼ねてひと足先に読ませていただいたとき、自分がこんな一大企画に携わっていることがどこか信じられないような不思議な気持ちがして、しかもみんながあんまり上手な小説を書き上げて来るものですから、こんなにすごい人たちのいる大学に入れて良かったなぁとありがたく感じたりもしました。

パンがテーマのアンソロジーだから、「パンソロジー」。いつの間にか「パンソロ」と略されて、たくさんの人に楽しんで読んでいただけました。

パンたちはそれぞれの物語の中で、思いもよらない形で登場したり、鍵となる重要な役割を担っていたり、はたまたほんのちょっと日常の些細な瞬間、ただそこにあるだけの存在として描き込まれていたりもして。同じテーマでも、いや、同じテーマだからこそでしょうか、個性が際立って、とにかく魅力ある面白い作品ばかり読ませていただきました。本当に贅沢な体験だったなぁと今でも素敵な気持ちになります。

実はわたしも企画者兼参加者として拙いながらも物語を書いてみたんですが、そのときに登場させたのは昔から大好物のくるみパンでした。あぁ本当に懐かしい、思い出深いですけれども、今読み返したら恥ずかしさで発狂しそうです。できることなら書き直したい、いや抹消させてくれ……。だけどこのnoteだって少し時が経てばきっと、そんなふうに恥ずかしく感じるんでしょうね。嫌だなぁ。

そうそう、とにかく下手くそなのを承知でなんとかひとつのお話を書き上げたんです。自分の書いたものに触発されるなんて変な話ですが、パン屋さんの扉を開けるときのわくわく感、迎えてくれる小麦やバターの香ばしい匂い、それからトレーやバスケットに行儀よく並べられたたくさんのパンたちと、どの子を買って帰ろうか首を傾げながらお店をうろうろする楽しさ、いざ口に入れた瞬間のあの幸せな味、食感、香り……読んだ人がパン屋さんに行きたくなるように書こうと丁寧に描写すればするほど、自分もパン屋さんに行きたくてたまらなくなる。パソコンの前に座ってふわふわとパンについて考えをめぐらせる時間は穏やかで楽しいものでした。わたしのお腹の虫は始終、不服そうにぐるぐると鳴いていましたが。

そういうことがあって、パンソロジー制作後、だんだんとパン屋さんにハマりはじめました。インスタを見ていると、同じようにパン屋さんが好きな方がおすすめのお店やパンをたくさんたくさん載せてくださっていて、そのどれもが美味しそうで迷うんですけれども、よく晴れて暖かい日は、散歩がてら目星をつけていた素敵パン屋さんに足を伸ばしてみるわけです。

そんなふうにして、春休みにもいくつかお店を開拓しました。そのぼっちパン屋さんめぐりのことも、そのうち書いてみたいと思います。

はる



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