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風花 朋(Kazahana Tomo)
2022年1月30日 13:57
冬に想う、夏のうだるような暑さ、容赦なく照りつける日差し、鳴きやむことのない蝉の声、草いきれのこもる道、夕立のあとのアスファルトの匂い、夜空に煌めく大輪の花。そのすべてが狂おしいほど恋しい。暑さで皆が少しずつおかしくなってしまうような。匂い立つ濃密な闇。なにかが起こりそうで、でも結局なにも起こらないまま終わる夏。胸がぎゅっと締めつけられるようなあの空気感。あの中にいますぐ戻りたいと、そう願う。
2021年7月17日 15:40
扇風機の風でなびく髪の毛を、頭の両側から挟み込むようにクシャっと掴んで離してみる。ふわりとトリートメントのいい香りがする。部屋のなかから眺めるベランダは、刺すような強くまぶしい日差しに照らされて、そこだけ白く浮いたように見える。そのベランダの光が反射して、ほのかに部屋のなかは明るい。しかし明るすぎることはなく、心地のよいほの暗さも残っていた。なんとなく流しているテレビから、まるでBGMのよ
2021年7月11日 11:57
煌めく水の流れ、滲むネオン。昼間の熱がこもったままのアスファルト。顔にまとわりつく、蒸せかえるような草いきれ。息を大きくひとつ、吸いこんだ。それは紛れもなく、夏の夜の匂い。夏の夜の、すべてが可能になるようなワクワク感が好きだ。大人になった今だって、ずっとそう感じている。その瞬間は永遠。ずっとこの夜のなかに閉じこもって、その美しさに酔いしれていたい。無限のループ。どこか懐かしさを感じるような
2020年9月6日 15:20
肌を焦がすような、あの痛いくらいの日差しも、まるで永遠に続くかのように感じられたねっとりと濃い闇夜も、そのすべてに纏わりついていたあのドキドキやワクワクも、全部、ぜんぶ過ぎ去ってしまう。あっという間に駆け抜けていく。気づくともうおしまいの時がきてしまっている。暑さに意識は朦朧とし、正常な判断もままならない。でもそれは言い訳にすぎなくて、本当はすこし道がそれたことを楽しんでいた。でもそれ
2020年9月3日 20:43
水面に太陽の光が反射している。ギラギラと照りつけるその光は強烈で、あまりの眩さに目を開けていられないほどだ。海水の温度はちょうどよく生ぬるく、ふわふわと何時間でも漂っていられそうだった。私は海中に浸した手をひきあげ、両指を組んで一枚の面を作った。そしてその手のひらを煌めく海面へかざす。そうするとその眩い光が、私の手のひらについた海水の滴に反射して、キラキラと輝きだす。波の揺らめきが