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日曜美術館を見て

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『日曜美術館』を見た感想を綴ります。美術に興味を持ち始めたのは、ほんの最近ですが、素人ならではの新しい切り口で語れればいいかなと思っています。
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日曜美術館を見て

日曜美術館を見て

今回の日曜美術館は『宮脇綾子』。たかが布切れ、されど布切れ。布切れの可能性、人間の創造性。

日曜美術館を見て 黒田辰秋 2025.2.16

日曜美術館を見て 黒田辰秋 2025.2.16

久しぶりの感想。
今回のテーマは黒田辰秋。木漆工芸家。
赤漆を塗った作品は見る向きによって光が動き、新しい顔を見せる。螺鈿も好き。
「自分の作品は地球と代えられる価値を持っているか」と本人は語ったが、そんなものがあるわけない。民藝は人間のためであり、アートは自己満足にすぎない。黒田辰秋はそれを知っていて、それでも理想に向かって進んでいったのだろう。

日曜美術館を見て(20241215)

日曜美術館を見て(20241215)

日曜美術館の今回のテーマは『熊野速玉大社の国宝』。最先端技術と古とが共存する不思議の国、日本。私は宗教を信じていない。しかし、昔人の神を信じる気持ちには興味があり、神社やそこに祀られる神様の像を造った人たちの神妙な思いには心を打たれる。現代でも行なわれている祭では、火に対する感謝の念が込められているという。火に感謝する人が火を暴力に使うことはない。感謝の念は戦争防止にも繋がる。

日曜美術館を見て(20241208)

日曜美術館を見て(20241208)

今回の日曜美術館は『シュールレアリスム』。無意識を捉えようとする芸術運動。見る人によって、ダリやキリコ、マグリット、エルンストの絵の解釈が違うのが面白い。シュールレアリスムが生まれた大きな要因は第一次世界大戦だった。不穏な世情が新しい芸術を生むのならば、今こそ新しい芸術の時代を作るチャンスでもある。

私の小説も無意識を意識しようとすることから始まっているので、おこがましいが、勝手に新シュールレア

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イラストレーター 宇野亜喜良―日曜美術館―

イラストレーター 宇野亜喜良―日曜美術館―

5月25日放映日曜美術館。
「自分の書きたいものを書くのではなく、相手の求めているものを書く」
聞き方によっては大衆迎合とも思えてしまう。「相手の求めているもの」をただ書くだけではその通りだ。
しかし、「相手の求めているもの」にプラスαを加える、相手の想像を超える何かをプラスしてこそが個性であり、プロの仕事なのだ。

小説も同じだと思う。自己満足に陥らないで、その中で個性を編み上げる。それがあって

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日曜美術館を見て(2023.9.24)

日曜美術館を見て(2023.9.24)

今回のテーマは『デイヴィッド・ホックニー』。イギリスの画家。
試行錯誤を繰り返しながら、絵の中に人が入っていける作品作りに挑戦した。逆遠近法を編み出し、作り上げた絵は確かに絵の中にいるような気分になるから不思議だ。その一因として、大きな絵だからこそ、その中に入っていけそうな気持ちになれるのだろう。
イギリスではまだ同性愛は法律で取り締られていた時代に、それを暴露するような絵を描いた。親から「隣の人

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日曜美術館を見て(2023.9.17)

日曜美術館を見て(2023.9.17)

今回のテーマは日本伝統工芸展。
若者から人間国宝までの作品が日本橋三越で鑑賞できる。

作品はどれも伝統を受け継ぎながらも、素朴さの中に新しさが加わった現代的なものも多く、テレビで紹介された人たちの技巧の細かさに驚かされる。

特に気に入ったのは、漆芸 蒔絵箱「木洩れ日の熊谷草」。黒の背景にピンクの花と青い葉が浮き上がって見える。
また、漆芸 彫漆箱「遥かに」は青のバリエーションがとてもきれいで、

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日曜美術館を見て(2023.9.3)

日曜美術館を見て(2023.9.3)

今回のテーマは霧の芸術家、中谷芙二子。

最初、ノズルで霧を作るということは、人間が自然を作ることだと考えて、正直抵抗感を感じた。
しかし、中谷芙二子の「礼儀を尽くせば自然が答えてくれる」という言葉には、自然に対する信頼感が溢れている。

霧はノズルから出た途端に自然に変わる。風の変化によって、霧も姿を変えていく。そんな様子を見て、「霧の芸術」とは自然と一緒に作る芸術なのだと実感した。

実は『霧

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日曜美術館を見て(2023.8.27)

日曜美術館を見て(2023.8.27)

今回のテーマは絵本画家の八島太郎。
絵本には子供のためだけの絵本と大人にも読んでもらいたい絵本がある。八島太郎の絵本は後者になるだろう。

戦争は亡くなった人たちだけでなく、生き残った人たちにも当然のように影響を与えた。
敗戦国日本で生まれ、戦勝国アメリカで暮らした八島太郎にとっても大きな傷を残した。

日本でプロレタリア画家として投獄され、絵を書くためにアメリカへ渡った太郎は、太平洋戦争に巻き込

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日曜美術館を見て(2023.7.23)

日曜美術館を見て(2023.7.23)

今回のテーマはガウディとサグラダファミリア。

サグラダファミリアについては、100年経ってもまだ完成せず、いつ完成するかもわからない不思議な建築物というイメージしかなかった。

今回の番組を見て、ガウディは生きている間にサグラダファミリアが完成するのを望んでいたのか。もっと言えば自分の死後に完成して欲しかったのか、という疑問が湧いてきた。

すべてのモノは完成した時点から崩壊が始まる。建物を完成

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日曜美術館を見て(2023.7.16)

日曜美術館を見て(2023.7.16)

今回のテーマは女性洋画家の三岸節子と長谷川春子。

女性洋画家が認められなかった時代に生き、さらに戦争に大きな影響を受けた二人。しかし、二人の生き方には大きな違いがあった。
節子は両親の反対を押しきって画家になった。一方、姉の勧めで絵を学び、パリへ留学した春子。
それでも、女性洋画家の地位向上を目指すという点で二人は結びつき、親友となる。

戦争が始まると春子はこれを女性画家の立場向上に利用しよう

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日曜美術館を見て(2023.7.9)

日曜美術館を見て(2023.7.9)

今回のテーマは絵本作家のかがくいひろし。『だるまさん』シリーズは本屋で表紙だけは見たことがあったが、内容は初めて知った。
言葉もわからない赤ちゃんでも楽しめる絵本として、今でも増刷されているらしい。大人の自分が見ても笑顔になれる絵本だ。

特別養護施設の教師を長年勤め、病気の子供たちと一緒にいた時間が、絵本作品に活かされたと言う。50歳から絵本作家となり、4年間で16冊の絵本を出版した。54歳のと

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日曜美術館を見て(2023.6.3)

日曜美術館を見て(2023.6.3)

今回のテーマは「アートと音楽」。坂本龍一と日比野克彦が東京現代美術館で開催された「アートと音楽」をテーマにした展示について語り合う。

アートと音楽は昔から結びついていた。映画やミュージカル、音楽のPVだって、ある意味アートと音楽を結びつけたものと言える。

坂本龍一はアートは既成概念を壊すためにあると言う。印象派しかり、キュビズムしかり、現代アートしかり、すべては既成概念を破壊することを目的とし

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日曜美術館を見て(2023.5.21)

日曜美術館を見て(2023.5.21)

今日のテーマは挟土秀平さん。左官を超えた芸術に挑戦している。

正直言って左官と芸術を結びつけて考えたことはなかった。
壁は背景であり、本来は脇役であるはずだが、絵は壁に掛けるものなのだから、壁自体が絵になってもまったく不思議はない。挾土はバンクシーの影響を受けたという。

挾土は「芸術に言葉はいらない」と言う。確かに絵が描かれた背景や、そのときの画家の心理状態などを知識として持ってから絵を見るの

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