明日あしたの雨の色/深月水月

文字を食べて文字を吐く人/2.5も二次創作も好きなもの全部つめこむ、ごっちゃ箱/

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野にキリンのいて/そこに陽炎がたっている/朝の光に消え残った/命のかたちのまま/真昼の熱/わたしの手はもう/届かないと思う

20240722知らない

読むということは、わからないと知ることだ。 書くということは、届かないと知ることだ。 あなたの声を聴きながら 私はあなたが私ではないことを知らされる。 あなたと手…

20240720ひかりのおもさ

光のはかり方を、忘れてしまった。 重さが分からなければ必要な器を用意することができない、だというのに天上から絶え間なくこぼれ落ちてくる光。閉じてください、と祈る…

20240717たましいのそくど

 魂には速度があるのだと、遠くへ出かけた日に思う。走るとか自転車だとか、それくらいまでは大丈夫なのだけれど、それを超えた速さでの移動には多分、魂は着いていけない…

言葉にして語れる事は詩にならないのだな、と最近思う。若い頃のように「どうしてもこの気持ちを理解されたい」という衝動が失せたのも大きいだろう。詩を書き始めて2年が過ぎて、未だに詩の書き方は分からないけれど、時が来れば咲いてしまう花のように、ささやかに詩を掬い取りたい。

ひとつ、骨を取り出して。ひとつ、灰の上におく。それで終いにする。空になった胸のまんなかに、ひかり、しらじらと明けてゆく冬が、沁みて、ああ、ようやく私は水際になる。打ち寄せては手放す繰り返しの、その狭間に。

冬を生きている。
それは過ぎてしまった春を生きていることでもあり、未だない春を生きている事でもある、と思う。
過ぎてしまった日々を、人々を生きている。明日を思いながら。

年末に申請してようやく公式からコードが届き、bluesky始めました。
Xの騒しさが別世界のような静かな空。300文字呟けるのは良いです。
ぼちぼち詩片やwonderの感想など呟やき始めてます。あちらの空で会えたらよろしくお願いします。

目で見ると美しいのに、写真に撮るとがっかりする。人が見ると言う行為はかように恣意的なものであるとつくづく思う。人は見たい真実を見る。世界に、自分の人生に。
「うつくしいのは、世界をうつくしいと見る人という存在なのです」
闇すらも物語にして、人は。

わたしのために
用意されている、ひなたの椅子
まるい背に花はふりそそぎ
──まだ、まあだ、だよ
見覚えのあるいくつもの骨が
しろく手招きをして
いつか行くのだろう私も
──ま、だ

木陰におもく脱ぎ棄てられた
靴に水はそそがれ
見ることもなく私も
数多の陰のひとつとして


眠れば今日という連続が終わってしまう。明日の私は今日の私ではなく、今日の私に明日の私を知る術はない。ここにあるのは「今この瞬間」という永遠だけだ。

【詩】重陽

あしもとの影が濁りをうしなって 夏が終わった事に気づく わたしたちは手に入れる事ではなく うしなう事で思い知るいつも いつも そこに在ったものを 眠りにつくたびに 少…

【詩あそび七十二候】霜止出苗

私たちを萎れさせたのは いつだって優しげな顔で 注がれるものではなかったか はるか天の高みから 与えられるのは 穢れのない正しさで 私たちは俯かなければならなかった …

【詩】水深

鉢の中で語り続ける魚たちは、 見えもしないものを覗き込むように眼を開き続けている。 ええそうね、わたくしたちはそういったもの。 ひれの艶めきもつくり出す泡のうつく…

【詩あそび七十二候】葭始生(よしはじめてしょうず)

胸のあたりに角ぐむ 葦が語るのは もうずっと昔に帰っていった 誰かの言葉 湿原をゆくのなら 恐れずにおいで 手放すことも 忘れられることも いつかの冬は 土の下に ねん…

【詩あそび七十二候】虹始見(にじはじめてあらわる)

「世界でいちばん寂しいのは、誰だと思う?」 一番さみしいのは、神様なんだよ 「神様なのに?」 そう、神様だから 何一つ欠けることがなく 何一つ知らぬことがなく 何一…

野にキリンのいて/そこに陽炎がたっている/朝の光に消え残った/命のかたちのまま/真昼の熱/わたしの手はもう/届かないと思う

20240722知らない

20240722知らない

読むということは、わからないと知ることだ。
書くということは、届かないと知ることだ。
あなたの声を聴きながら
私はあなたが私ではないことを知らされる。

あなたと手をつなげるのはあなたが私ではないから。
あなたの内側にはあなたの書物があり、わたしが触れた瞬間にあなたの知らない物語になって開かれてゆく。私の言葉をあなたが拾いあげ、うつくしい書棚にしまいこんだように。

それでも触れたいと思う。
あな

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20240720ひかりのおもさ

20240720ひかりのおもさ

光のはかり方を、忘れてしまった。
重さが分からなければ必要な器を用意することができない、だというのに天上から絶え間なくこぼれ落ちてくる光。閉じてください、と祈るけれど叶わない。

月は優しいというが、星の方がもっと優しいではないか。煌々と照らすことなく静かに空を光で満たして、足元の大地を闇に沈めておいてくれる。私たちは暴かれることを恐れずに夜を進む事ができるのだ。

お行き、星を道しるべにして。

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20240717たましいのそくど

20240717たましいのそくど

 魂には速度があるのだと、遠くへ出かけた日に思う。走るとか自転車だとか、それくらいまでは大丈夫なのだけれど、それを超えた速さでの移動には多分、魂は着いていけないのだ。

 見慣れぬ景色や植生、空気の湿り気や匂い。訪れた先で感じた「よその土地」の感覚が、帰宅後もまだあたりに漂っている気がして、肉体は帰ってきたのに魂はまだ向こう側から帰ってこれないのだと、ぼんやりと魂が戻ってくるのを待つ。

 帰って

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言葉にして語れる事は詩にならないのだな、と最近思う。若い頃のように「どうしてもこの気持ちを理解されたい」という衝動が失せたのも大きいだろう。詩を書き始めて2年が過ぎて、未だに詩の書き方は分からないけれど、時が来れば咲いてしまう花のように、ささやかに詩を掬い取りたい。

ひとつ、骨を取り出して。ひとつ、灰の上におく。それで終いにする。空になった胸のまんなかに、ひかり、しらじらと明けてゆく冬が、沁みて、ああ、ようやく私は水際になる。打ち寄せては手放す繰り返しの、その狭間に。

冬を生きている。
それは過ぎてしまった春を生きていることでもあり、未だない春を生きている事でもある、と思う。
過ぎてしまった日々を、人々を生きている。明日を思いながら。

年末に申請してようやく公式からコードが届き、bluesky始めました。
Xの騒しさが別世界のような静かな空。300文字呟けるのは良いです。
ぼちぼち詩片やwonderの感想など呟やき始めてます。あちらの空で会えたらよろしくお願いします。

目で見ると美しいのに、写真に撮るとがっかりする。人が見ると言う行為はかように恣意的なものであるとつくづく思う。人は見たい真実を見る。世界に、自分の人生に。
「うつくしいのは、世界をうつくしいと見る人という存在なのです」
闇すらも物語にして、人は。

わたしのために
用意されている、ひなたの椅子
まるい背に花はふりそそぎ
──まだ、まあだ、だよ
見覚えのあるいくつもの骨が
しろく手招きをして
いつか行くのだろう私も
──ま、だ

木陰におもく脱ぎ棄てられた
靴に水はそそがれ
見ることもなく私も
数多の陰のひとつとして


眠れば今日という連続が終わってしまう。明日の私は今日の私ではなく、今日の私に明日の私を知る術はない。ここにあるのは「今この瞬間」という永遠だけだ。

【詩】重陽

【詩】重陽

あしもとの影が濁りをうしなって
夏が終わった事に気づく
わたしたちは手に入れる事ではなく
うしなう事で思い知るいつも
いつも
そこに在ったものを

眠りにつくたびに
少しずつ澄んでゆくあなたの
いのち、は何処にあるのだろう
しろく清潔なひかりに満たされた場所で
目覚めるたびに
見知らぬ誰かになってゆくその人は
抱きしめてとさしのべた手を
振りほどいたあなた
許してとうずくまる子を
つきはなしたあな

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【詩あそび七十二候】霜止出苗

【詩あそび七十二候】霜止出苗

私たちを萎れさせたのは
いつだって優しげな顔で
注がれるものではなかったか
はるか天の高みから
与えられるのは
穢れのない正しさで
私たちは俯かなければならなかった
たおやかな乙女の風情で

   輝きをもてはやされるのは
   空を許されたものたちだけ
   地にあるものはうつむいて
   影を作らなければならない
   光が光であるために

わたしたちは苗床である

いいえ全てのわたしたちは苗

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【詩】水深

【詩】水深

鉢の中で語り続ける魚たちは、
見えもしないものを覗き込むように眼を開き続けている。

ええそうね、わたくしたちはそういったもの。
ひれの艶めきもつくり出す泡のうつくしさも水底に沈殿してゆくはいせつぶつも語りつづけることによりわたくしたちになるのです。等しくわたくしたちがそのようなモノであることに異議を唱えたりなどいたしましょうか。

水面にはじける言葉は、ことほぎと呪詛とを孕みながら
ポンプのモー

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【詩あそび七十二候】葭始生(よしはじめてしょうず)

【詩あそび七十二候】葭始生(よしはじめてしょうず)

胸のあたりに角ぐむ
葦が語るのは
もうずっと昔に帰っていった
誰かの言葉
湿原をゆくのなら
恐れずにおいで
手放すことも
忘れられることも

いつかの冬は 土の下に
ねんごろに葬られ
空っぽの茎をつたって
水は溢れてゆく
水辺には
名も知らぬ鳥たちが
巣をかけるだろう
夏の光だけをたよりに
秋のかげりも知らずに

うつろの身体に
満ちることなく過ぎゆく
あまたの風
私のささやきは地に落ち
いくつめ

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【詩あそび七十二候】虹始見(にじはじめてあらわる)

【詩あそび七十二候】虹始見(にじはじめてあらわる)

「世界でいちばん寂しいのは、誰だと思う?」

一番さみしいのは、神様なんだよ
「神様なのに?」

そう、神様だから
何一つ欠けることがなく
何一つ知らぬことがなく
何一つほしいものが無く
誰かに埋めて欲しい寂しさも
感じたことが無くて

ひとり
        はじまりもおわりもなく

神様は空の上で描き続けている
分かつための線
求めるためのひかりと
ひかりが光であるための
くらやみを

どこに

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