野にキリンのいて/そこに陽炎がたっている/朝の光に消え残った/命のかたちのまま/真昼の熱/わたしの手はもう/届かないと思う
ひとつ、骨を取り出して。ひとつ、灰の上におく。それで終いにする。空になった胸のまんなかに、ひかり、しらじらと明けてゆく冬が、沁みて、ああ、ようやく私は水際になる。打ち寄せては手放す繰り返しの、その狭間に。
目で見ると美しいのに、写真に撮るとがっかりする。人が見ると言う行為はかように恣意的なものであるとつくづく思う。人は見たい真実を見る。世界に、自分の人生に。 「うつくしいのは、世界をうつくしいと見る人という存在なのです」 闇すらも物語にして、人は。
わたしのために 用意されている、ひなたの椅子 まるい背に花はふりそそぎ ──まだ、まあだ、だよ 見覚えのあるいくつもの骨が しろく手招きをして いつか行くのだろう私も ──ま、だ 木陰におもく脱ぎ棄てられた 靴に水はそそがれ 見ることもなく私も 数多の陰のひとつとして
影踏みをしようよ 寂しい心が 消えてしまわぬように 影踏みをしよう 寂しい石を 握り締め かげふんだ かげふんで くろいかげふみ ぼくのこころは つきにてらされ おちている かげふんだ まっくらやみに かげふんで
今日もどこかで愛し子が 正しさのための銃を撃つ 引き起こされた撃鉄は 尽きることない悲しみの 証を大地に刻むだろう おやすみおやすみ愛し子よ 優しさ故に正しさに 轢き殺されるその生が ぱちりと終わるその日まで 私のことなど忘れたままで 命のままに生きてゆけ
精一杯生きて 生きて あなたと同じ 明日を迎える喜びを チャンスが誰かのためにあるのなら それは私だと思いたいのです
カウントダウンをするように/曜日を数える/水曜日、あと2つ//残りが少なくなるほど/次の始まりが近づくことに/意識を向けないようにして//おはよう/おやすみ/またあした//朝が明けるたび/日めくりの私は/うすくなってゆく
雨が降っていた 対岸で虹を呼ぶあなたは ひとつふたつ花を咲かせ うつむく私の蹄には 緑の苔が生えた ただ、それだけの事だった あなたを撃ち抜いた雨は 川辺に降り続け 思い出す事もあるだろう あなたという岸に あふれた水のことを 倒れた私の角に いつか芽吹くように