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【詩】水深

鉢の中で語り続ける魚たちは、
見えもしないものを覗き込むように眼を開き続けている。

ええそうね、わたくしたちはそういったもの。
ひれの艶めきもつくり出す泡のうつくしさも水底に沈殿してゆくはいせつぶつも語りつづけることによりわたくしたちになるのです。等しくわたくしたちがそのようなモノであることに異議を唱えたりなどいたしましょうか。

水面にはじける言葉は、ことほぎと呪詛とを孕みながら
ポンプのモーター音と共に溢れつづけている
部屋の中はしらじらと日の光に染められ
濡れた床の上ではさかさまの魚たちが泳いでいる

たたえなさい、たたえなさい、たたえなさい
わたくしたちと同じようにあなたも
        あなたたちも。
         みなぞこにとけてゆくひとつの──。

魚たちはまどろんでは語り、
語ってはまどろみ
呟きは泡立ちながら床を満たしここは水の中であったかと

(そもそもの始めから静寂など)

いきるものたちがじょうぜつなのはきっと恐ろしさのゆえなのです。わたくしたちは語り続けなければとけこんでしまうのですひとかたまりに描かれるなもなきモノたちのようにそれが恐ろしくてつぐむ事もできず。

鳥のかげが窓辺を通り過ぎ、
いっとき、身をすくめた魚たちは夢から覚めるように泡を吐くとふたたび呟きを落とし始める。

   ──空がそこにある事を望むのなら、そう言い続ければよい
    それは水ではない、と。

わたくしたちは
  かたり続けるのです。
    ひらいては閉じる、
       みずの底から。

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