#本
倫理観はどこまで遡及されるべきなのか『夜の道標』
法律には不遡及の原則というものがあります。
一方で、価値観や倫理観はどこまで遡及されるべきなのか。まさに今起きている事を見てそんなことを深く考えさせられています。
優生保護法、子どものネグレクト問題など、なかったことにしてはいけない深い問題が描かれた重い作品でした。
「今だからこそ大問題、だけど、当時はそれが正しいと思っていた」なんて話はここに出てくるだけじゃないでしょう。
価値観が違うのは世代
『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』
柚月裕子はとても好きな作家で、それこそ「出たら全部読む、絶対」ということにしているんです。が、実は前作『合理的にあり得ない』が出たときには「あー柚月さんにはもっと巨悪に挑んで欲しいなー」なんて感想を持っていました。もっと重いヤツ期待。と。
そんなわけで、手元にあったものの少し放置されていた作品だったのですが、この暑さ疲れもあって気楽に読める本がいいなと手にとったら一気読み。前作を読んだのは発売す
『ペニー・レイン 東京バンドワゴン』
「今年も、親戚の家に遊びに行って近況を聞いてきました」というのが率直な感想です。もう18冊目なんですって。コミックでは珍しくない巻数ですけど、小説でこれをやり続けてるのはほんとにすごいことです。
サザエさん的に時間がすすまないわけではなく、バンドワゴンを営む堀田家では皆が成長し、悩み、新しい展開があって…と、確実に時が動いています。だからこそ、小さい頃から見知った子もいる親戚に遊びに行って、1年
『誰が千姫を殺したか』こういう本を出し続けるために講談社には儲け続けて欲しい
柳生十兵衛が出てきたり、忍者が活躍したり、史実の裏でめちゃくちゃな事が起こってる小説を読みたくなったら私は荒山徹一択なんですが、そういえば最近あんまり見ないなー…
そうしたところ、その心の隙間を埋めてくれる本が出ました。
『誰が千姫を殺したか』
大阪城落城とともに死んだと思っていた豊臣秀頼が生きていて(いや、生きてたどころか蛇になってるので蛇身探偵)、大阪城の夏の陣の最中に起こった千姫の殺害の
『キツネ狩り』悪夢を見そう、でももっと読みたい
tps://amzn.to/3pgcjhv新潮ミステリー大賞受賞作だというので読んでみました。
まーなかなかにエグイ描写が多くて、一家が幼い子供も含めて皆殺しになるシーンなんかは本を放り出しそうになりました。
殺人現場なんて見たくもないけど、幼い子どもが殺されているシーンとかを読ませ、徹底した嫌悪感を煽っていることが追い詰める警察官たちへの感情移入にも繋がって、一気に読めます。
主人公は三年前
ロールモデルってこういうこと『明治のナイチンゲール 大関和物語』
めちゃくちゃ良かった。
すぐにでもNHKの朝ドラになってほしいと思いながら、目頭熱くして一気に読みました。
今度、劇団四季が手がけることになった『ゴーストアンドレディ』はナイチンゲールを主人公にしたお話です。それを知ってすぐさまマンガを読み、ナイチンゲールに対しての興味が沸いていたタイミングだったので”明治のナイチンゲール”というタイトルに惹かれた、というのが読んだきっかけ。
著者の田中ひかる
間違いなく映像化困難『署長シンドローム』
よく「映像化困難!」という本が出てきますが、この本も別の意味で映像化困難だと思います。
なんたって、主人公の女性署長がどんなうるさ型も瞬時に骨抜きにしちゃうような美貌の持ち主、なわけですよ。そしてその美貌と彼女のキャラクターが本編の物語を進めることに大きく関係している、というわけ。
ドラマにしたって、他の美人女優を凌駕するオーラを出さなきゃならないわけで、派手に演出したらコントになっちゃうしなあ…
『成瀬は天下を取りにいく』…なんだこの楽しさは!!
なにこれ、めっちゃ楽しい。
最近の小説、特に青春小説は子どもが不幸になりがちで「不幸にならないと感動はないのか…」と暗澹とした気持ちを抱いていたところでした。
この本はそんな暗澹とした気持ちをどーんと吹っ飛ばしてくれるような小説です。
中高生時代。活動範囲は狭いけれど、大人が思っている以上に彼らの心の中の世界は大きく、そして彼女、彼らの前に広がる世界は無限です。
成瀬たちが生きる世界では、西武
会話2分間で「え?」的な反応がなかったとしたら…『会話の科学』
初めて会った人と会話して「あー、この人とお話するのは楽しいな、もっと話したい」と思うというのは、もしかしたらものすごーく稀少な体験なのかもしれません。この本を読むと、そんなことを考えるようになります。
なんたって、会話というのは極めて高度な協力行動から成り立ってるものなのですから。
こんな複雑なことを、そしてそれも0コンマ何秒というスピードで処理していかなきゃいけないんだとしたら、そりゃあAIの
『連鎖』は警察小説ながら読むとお腹が空くこと間違いなし
黒川さんの小説を読んだのは久しぶり。
警察小説というのは真面目過ぎて悲壮感が漂っちゃう、もしくは崩しすぎて悪徳警官になっちゃう。など笑いと真剣さの塩梅が難しいもんですね。
これは二人の刑事が軽口を叩きながらも、徹夜して(帰れる日は帰ればいいのに徹マンしたりするからさ)ボロボロになったりしながらも細かく事実を積み上げ巨悪に迫る物語。バタバタと事件が起こり続けるわけではないけれど、二人の姿にどこと
『スタッフロール』では映画技術への愛が爆発していた
女性が社会で活躍できていないというのは、未だにこんなに大きな問題なのだから、戦後なんてもってのほか。アメリカだってきっとこの小説に書かれたような感じで「女の子は家で良い子にしている」が推奨されていたんでしょう。その狭い世界から飛び出すために力を貸してくれたのは「白馬の王子さまではない」というところをすごく面白く感じました。
前半の主人公のマチルダは、両親の友だち(映画関係の仕事をしていた)の影響