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ロールモデルってこういうこと『明治のナイチンゲール 大関和物語』
めちゃくちゃ良かった。
すぐにでもNHKの朝ドラになってほしいと思いながら、目頭熱くして一気に読みました。
今度、劇団四季が手がけることになった『ゴーストアンドレディ』はナイチンゲールを主人公にしたお話です。それを知ってすぐさまマンガを読み、ナイチンゲールに対しての興味が沸いていたタイミングだったので”明治のナイチンゲール”というタイトルに惹かれた、というのが読んだきっかけ。
著者の田中ひかるさんは、以前にも『明治を生きた男装の女医-高橋瑞物語』というノンフィクションを書いています。これについては、HONZで仲野先生がレビューを書いていらっしゃるのでそちらをご参考に
この大関和(ちか、と読みます)は、藩の家老の娘として産まれました。その家柄が故に、幸せでない結婚をし早くして離縁、シングルマザーとなって…と男女が平等ではない中での苦労を味わいます。
東京に出てきて、女中として働きながら学問と出会い、英語を学び、そしてキリスト教と出会う中でナイチンゲールの存在や、看護婦という存在を知ることになります。
当時は看病婦と言われ、専門知識もなく賤業とされてきたのがこの仕事でした。しかし、その技能向上が人の命を救うことに繋がるという信念をもった和は、そのまっすぐな心と性格の全てを「看護婦」の職業化、専門技術化に傾けます。愚痴をこぼしながらも諦めず、周囲の人たちも巻き込んで生きていく和の姿、そして周囲の人たちの支えに何度も感動させられました。
困難に立ち向かう彼女と出会い、晩年までを支えたのが相馬愛蔵・黒光夫妻だったということなど知らない話がいっぱいあり大変タメになりました。
女性が偉くならないのは、ロールモデルがないからだ、という話をされたことがあります。そもそも、女性のロールモデルは女性じゃないとダメなのか?など普段は色々言いたいことが多いんです。
でも、これを読んで反省しました。日本には、自分の道の前を照らしてくれる存在はいない、ただ、世界を見渡せば、世の中を大きく動かす、自分と同じような矜持をもって生きているナイチンゲールがいる。そして彼女が書いた書物がある。あぁ、これぞロールモデルなんですね。
女性の活躍の指針として数値目標が掲げられました。そのこと自体は必要なのだけど本質ではありません。こういう風に「何をやるべきか」「なにを成し遂げたいのか」という、熱いものを持つ女性が増えていくことが必要なんだと思うのです。先人にはこんな頑張りをしてくれた、世に誇れる女性が沢山いるのに、まだまだ世界の偉人の方ばかりが有名だ、ということに本の売り手として少し反省をしています。
ノンフィクションですが小説のように読めるので、ぜひチャレンジしてみてください。