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第四章 春ヶ原と精霊たちの心 真っ暗な自室で、風花は正座をしていた。 目を閉じて、…
あの日から今日まで、飛雨は尽力してくれている。 わざわざ、風花の家に通ってくれる。 …
「夏澄は時間がある限り、春ヶ原を見護っているよ。今日は二時間くらいだったかな」 「なにか…
風花はあれから、夏澄とスーフィアに会っていない。家に来るのは飛雨だけだ。 最近の夏澄…
「風花、まだ起きてるのか?」 兄の星夜の声だった。 風花には月夜と星夜の二人の兄がい…
「もう観ないよ。眠るね」 「ああ、おやすみ」 優しく風花を見る。その時、星夜の部屋から…
眠い。もうだめ。 風花は教科書で顔を隠し、目を閉じた。 閉じた途端、意識が薄れていく。がくっと頭が下がり、驚いて目を開けた。 「どうしたの? 風ちゃん」 となりの席の、ひろあがささやく。 「先生が見てるよ」 ……。 風花は半開きの目で教卓を見た。 黒板の前の英語教師は、ちらちら風花の様子を窺っている。 今日は機嫌がわるそうだ。 英語教師の木下は、風花のクラスの担任でもある。三十代で、長い髪をきっちりアップにしている。 眼鏡が似合う知的な美人
やっと休み時間になった。 風花は机に顔を伏せて、目を閉じる。 「この頃おかしいよー。…
「風ちゃん、ほんと楽しそうだね。いいなあ」 ひろあが上目遣いで風花を見る。 「それ、想…
「そういえば、飛雨とスーフィアさんがいないね」 風花は辺りを見まわした。 「飛雨は人が…
「風花、見て……っ」 夏澄がふいに声を弾ませた。顏をあげて、瞳に青空を映す。 「ほら、…
「水蒸気の粒はすごく小さいから、光っていても見えないの。でも、絶対光ってるはずなの」 「…
じっと空を見上げていた夏澄が、ふいにぴくりと身じろぎした。 かすかに眉根を寄せ、東南…
「風花ー、お友達よーっ」 母親のゆり音が、階下から風花を呼ぶ。風花はあわてて、階段を駆け降りた。 「どうしたの? 飛雨くん」 いつも飛雨は、人目を避けて、夜中に窓から来る。今日は、宵に玄関からだ。なにかあったのだろうか。 「う、ん……。ちょっと、外で話せるか?」 分かったと、靴を履こうとした風花を、ゆり音が止めた。 「そんなこといわないで、あがってらっしゃいな」 「い、いえ。もう夜ですし、……よ、用事が済んだら帰りますので」 なぜか、飛雨の声は裏返る。