水の空の物語 第4章 第5話
「風花、まだ起きてるのか?」
兄の星夜の声だった。
風花には月夜と星夜の二人の兄がいる。兄たちは双子で、一卵性双生児だが、口調が違うから分かる。
「うん、起きてる……」
飛雨は素早く立ちあがると、音も立てずクローゼットに入り込んでドアを閉める。足自慢なだけあって、きれいな動きだった。
「なんか、話し声がしたから。開けるぞ」
「ま、待って……!」
風花はドアに駆け寄る。途中でクッションを踏み、体勢を崩して四つん這いになった。
「どうしたんだよ」
顔を覗かせた星夜が低くつぶやく。
あわてたように手を差し出してきた。風花が立ち上がると、室内を見回した。
「誰かいたみたいだったけど」
声、聞こえたんだと、風花は青ざめた。
動物が多い風花の家は、防音工事がしてある。だから油断していた。
「だ、誰もいないよ。……きっとテレビの音だよ。うるさくしてごめんね」
「テレビか……」
星夜は安心したようにわらう。
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