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水の空の物語 第4章 第15話

「風花、見て……っ」

 夏澄がふいに声を弾ませた。顏をあげて、瞳に青空を映す。

「ほら、巻層雲が増えたよ」

 さっきまで、山の上だけにあった巻層雲が、空の半分まで広がっていた。

 東の空では、さざ波のようになっている。

「ねえ、風花。あの東の雲は、波状雲ともいうんだよね。なんか、あの波の雲に、足だけ浸かりたくなるね。本当の波打ち際にするみたいに」

 空の波打ち際。夏澄のいう風景が、ぱあっと空に広がるようだった。
 風花は、本当に空を歩ける気がしてきた。

 夏澄くんと一緒に、空の波打ち際まで昇る。波を浴びて水遊びをする。

 きらきらな夢だ。

「ねえ、夏澄くん……」
「なに?」

「雲ってね、本当は光っていると思わない?」「え?」

「雲を作っている水蒸気は 白に見えるけど、本当は光っていると思うの。元が水だもん、光を反射してきっと光ってるよ」

 夏澄はじっと、風花の言葉を聞いていた。


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