水の空の物語 第4章 第8話
眠い。もうだめ。
風花は教科書で顔を隠し、目を閉じた。
閉じた途端、意識が薄れていく。がくっと頭が下がり、驚いて目を開けた。
「どうしたの? 風ちゃん」
となりの席の、ひろあがささやく。
「先生が見てるよ」
……。
風花は半開きの目で教卓を見た。
黒板の前の英語教師は、ちらちら風花の様子を窺っている。
今日は機嫌がわるそうだ。
英語教師の木下は、風花のクラスの担任でもある。三十代で、長い髪をきっちりアップにしている。
眼鏡が似合う知的な美人だ。あだ名はケンカちゃん。
相性がわるい古典教師の国原、……ケンカくんと、いつも喧嘩をするからだ。
きっと今日も、生徒たちの目の前で子供のような喧嘩をした上に、校長室に呼び出された。だから機嫌がわるいのだろう。
風花は無理矢理、姿勢を正した。
木下は普段は優しいが、機嫌がわるいと人が変わる。
でも、眠い。
風花は袖で目を覆った。
昨日、霊力の訓練をしているときは頭が冴えていた。だから、そのまま徹夜した。
授業も気合を入れれば、だいじょうぶだと思ったのだ。
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