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水の空の物語 第4章 第9話

 やっと休み時間になった。

 風花は机に顔を伏せて、目を閉じる。

「この頃おかしいよー。そんなに寝てないの?」
 ひろあの声がした。

「さっきの授業のこと覚えてる?」

 香夜乃の声もする。

「あんまり」
「こんなぐだぐだした風花、初めてじゃない」

「ちょっと寝ていい? 授業始まったら起こして……」
「ねえ、なにがあったの? そろそろ話してよー」

 不満気なひろあに、無理に聞いちゃだめだよ、と香夜乃が制する。

「だって親友同士で秘密なんて……」
 そんな声を聞きながら、風花は眠りに落ちた。

 霊力のことは、少し分かってきた気がする。

 念じるという飛雨の説明のお陰だ。イメージできるようになった。

 それで、土日の昼間も自主訓練した。徹夜もしたけど、霊力は芽生えなかった。

 ……早く霊力が欲しい。早く早く。夏澄くんたちや春ヶ原の役に立ちたい。

 どれくらい時間がたったのか、先生が来たよと、ひろあが体を揺する。

 学校なんかに来ている場合じゃない。
 早く……。

 授業中も瞑想すればいいんだ。

 名案だと、霞んだ頭の中で思った。

 風花は目を閉じたまま、イスの上に正座する。

「やめなよっ、みんな見てるよ!」
 悲鳴に近いひろあの声がした。



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