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「お前、なんでまだヘルメット常備しているんだ? 必要ないっていったろ」 まずいと、風花…
「それにさ……」 飛雨は表情を消し、天井を見る。 「春ヶ原の風の霊力は弱いぞ。もし…
「行、きたい……ー」 風花は肩を落とし、ひざに顔を押しつけた。 行きたい。 門限な…
「じゃあね、飛雨くん。今日もありがとう。また明日ね」 訓練が終わり、ガラス戸から出て行…
「今の自分にできることをしろって、いっただろが」 「だから、わたしは優月さん……」 答…
風花は布団にくるまり、えへへと顔を埋めた。 さっきの飛雨の言葉が想い出される。 大…
うまく、やれますように。 水色をした朝の空気の中、風花は霊泉への長い坂道を登っていた。 わたしは霊力がないから、ほとんど役に立たないけど。夏澄くんの役に立てますように。 息がひどく切れる。自転車のペダルを踏む脚が痛い。重い痛みが、脚全体に広がっていく。 急ぐ必要はないのだが、脚に力が入ってしまう。風花はペダルを踏み続けた。 藤原の御泉に着くと、自転車置場に向かう。 ペダルから脚を離すと、すーっと痛みが抜けていく。 髪の間を吹き抜ける風が、心地よかっ
『ついさっきのこと……、私と優月が、もうすぐ藤原の御泉に着くってときのことよ』 花を想…
『それは……。ごめんなさい、できなかったわ』 『霊泉に来たとき、優月が弱っていたのはだか…
「春ヶ原は、だいじょうぶですよ」 まだ晴れない顔をしている夏澄に、優月はゆっくりと話す…
「明日野湖を出た立貴は、なにをするでもなく、山の中で、ただぼんやりとしていました」 記…
風花は広場の端にある、杉の大木に駆け寄った。 勢いのままにすわり込み、空を見上げる。 …
風が夏澄に吹きつける。 夏澄は霊力で防御しているようだった。 これ、春ヶ原を傷つけた…
同時に強い風に押された。 なぜか、優月の周りで風が起きた。 風は渦のように優月の周りをめぐったあと、周囲に散らばった。 風花は正面から風を浴びる。 悲しげな香りの風に包まれた。思わず息を止めた。 やがて、風に熱のようなものを感じた。 夏澄の悲鳴が聞こえる。 胸の辺りが熱くなって、息ができなくなった。目の前が暗くなり、風花の意識は薄れていく。 薄目の風花の視界の中で、優月もふらついていた。 「夏澄、立貴みたいに風を霊力で照らしてっ」