見出し画像

水の空の物語 第5章 第16話

『それは……。ごめんなさい、できなかったわ』

『霊泉に来たとき、優月が弱っていたのはだからなの?』

『ええ。優月は木から離れたせいだと思っているみたいだけど、風を浴びたからよ。背後からだったから、優月は風を見ていないのね』

『でも、優月だって気配くらい感じるよな』

『遠くで浮かびあがった、弱い風だったからだと思うわ。……ねえ、みんな』

  スーフィアは、瞳だけ風花たちに向けた。

『もしかしたら、また同じことが起きるかもしれない。そのときは優月が傷つく前に、風を押さえましょう』

『そうだね。優月には、自分が狙われているなんて、気づかせたくないしね』

『これはいい機会って考えかたもできるよな。今日、風の原因を突き止めれば、春ヶ原が傷つくことはなくなるもんな』 

 飛雨の言葉に、風花の気持ちは高揚した。

  そうだ。今日、風のことを解決したら、悲しみを終わらせられる。

  わたしも、がんばろうっ。 

 いいたいが、風花は声を送れない。心の中で強く繰り返した。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?