水の空の物語 第5章 第9話
風花は布団にくるまり、えへへと顔を埋めた。
さっきの飛雨の言葉が想い出される。
大事だって……。
えへへと、もう一時間も、風花の頬は緩みっぱなしだ。
大事にされてるっていわれちゃった。
あの夏澄くんに、大事にされてるって。
「本当かなー」
風花はのけぞって天井を見つめる。
視線を巡らせると、部屋にあるアンティークのランプが目に入った。
暗闇の中で、霞んだ光を放っている。その光はいつもよりずっときれいに見えた。
心に差し込んできて、体を暖かくする。
風花は立ち上がり、カーテンを開けて窓の外を見た。
紺色の闇に、風が流れていた。
見えないその風は、夏澄くんのように透明できれいだと思った。
優しくて、風のように澄んでいる。
人とは全然違う、きれいで、透明な透明な夏澄くん。
出逢えて、こんな風に友達になれて、本当に夢みたいだ。
わたしだって、夏澄くんが大事だよ。
風花は出逢ってからの想い出を、ぎゅっと抱きしめる。
飛雨くんもスーフィアさんも、みんな大事な友達だ。
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