水の空の物語 第5章 第7話
「じゃあね、飛雨くん。今日もありがとう。また明日ね」
訓練が終わり、ガラス戸から出て行こうとする飛雨に、風花は手を振った。
「ああ、午前十時ごろには、藤原の御泉に来てくれな」
「うんっ」
精霊さんに、ゴールデンウィークは関係ないかもしれないけど、楽しんでもらおう。
笑顔で応えたとき、飛雨はなぜか、おでこに青筋を浮かべた。
一歩踏み出し、風花の顔を両手で挟むようにはたく。
ばちんと、音が響いた。
……痛い。
なんで?
「目が覚めたか? 風花」
風花は唖然とする。頬がひりひりした。
飛雨のすることは、たまに意味が分からなくなる。
「お前、そんなににこにこして、また夏澄の盾になろうって考えていただろ?」
……え?
「そんなこと考えてないよ」
「うそつくなよ」
「本当だってば」
「絶対、うそだ。うそつくな」
…本当だよ。絶対に。
風花は心の中で強くいう。
わたしは、優月さんのことを考えてただけだ。
なにかと思ったら、すごい勘違いだ
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