水の空の物語 第5章 第8話
「今の自分にできることをしろって、いっただろが」
「だから、わたしは優月さん……」
答えるが、飛雨は聞く耳を持たない。
「焦ったって、強くなれないんだぞ」
焦らなきゃ、強くなれないよ……。
飛雨のすることもいうことも、意味が分からないことばかりだ。
「大体、そんなことが夏澄のためになると思ってるのか?」
「ちょっとは、なるよ」
彼は、またおでこに青筋を浮かべる。
また、はたかれるかと思ったが、彼は横を向いて息をついた。
「おい、風花。お前、自分は精霊たちに嫌われてると思ってるだろ」
急に話を飛ばす。
「……」
だが、そのとおりなので、返事はできなかった。
「それ、違うぞ、少なくとも夏澄は、風花のこと大事に思っているよ」
いう彼が、一瞬、大人びて見えた。
風花は息を飲む。
そんな彼を見たのは初めてだった。
さすが五百歳。
いつもは、夏澄ー、夏澄ーと迷走ばかりだけど、ちゃんとした大人なのだ。
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