シェア
第五章 春ヶ原の光と影 ガラス戸から、涼やかな夜風が流れ込んでくる。 かすかに若葉の…
「お前、なんでまだヘルメット常備しているんだ? 必要ないっていったろ」 まずいと、風花…
でも、夏澄くんが危険な目に会うなんて……。 風花は壁にもたれた。 落ち着きなく、…
「それにさ……」 飛雨は表情を消し、天井を見る。 「春ヶ原の風の霊力は弱いぞ。もし…
「外出禁止……」 枕をぽんぽんと、ボールのように弄びながら、飛雨がつぶやいた。 「風花…
「今の自分にできることをしろって、いっただろが」 「だから、わたしは優月さん……」 答…
風花は布団にくるまり、えへへと顔を埋めた。 さっきの飛雨の言葉が想い出される。 大事だって……。 えへへと、もう一時間も、風花の頬は緩みっぱなしだ。 大事にされてるっていわれちゃった。 あの夏澄くんに、大事にされてるって。 「本当かなー」 風花はのけぞって天井を見つめる。 視線を巡らせると、部屋にあるアンティークのランプが目に入った。 暗闇の中で、霞んだ光を放っている。その光はいつもよりずっときれいに見えた。 心に差し込んできて、体を暖かくする
『風花、一歩踏み出してみて』 夏澄の声は続く。 いわれた通りにすると、周りの空間が歪…
優しい……。 夏澄にもらった言葉を、心の中で繰り返した。 わらいを堪えようとしたが…
「だいじょうぶ? 優月」 隣に立つスーフィアが、不安気にする。 こんなときでも、優月…
『いきなり、ごめんなさい。みんな』 優月と話をつづけながら、スーフィアは風花たちと心の…
『ついさっきのこと……、私と優月が、もうすぐ藤原の御泉に着くってときのことよ』 花を想…
『それは……。ごめんなさい、できなかったわ』 『霊泉に来たとき、優月が弱っていたのはだか…
風花は、夏澄たちみんなと並んで、大きな大きな樹を見上げていた。 樹は力強く枝を伸ばし、辺りの全てを緑に染めるように葉を広げている。 息を飲むくらいきれいな緑青色の空間だ。 正確にいうと、夏澄が幻術で映し出している樹だ。 「本当に美しいですね」 感嘆の声をもらして優月がいう。 彼からその言葉を聞くのは、もう何度目か分からない。 「生き生きとして枝葉もよく茂って、健康な樹です。水の精霊の国に暮らす樹は幸せですね」 優月はとてもきれいに微笑んだ。 今