水の空の物語 第5章 第11話
『風花、一歩踏み出してみて』
夏澄の声は続く。
いわれた通りにすると、周りの空間が歪んだ。
気がつくと、水の幕で覆われた空間の中にいた。霊泉の結界だ。
「来てくれてありがとう」
結界の中で、夏澄は飛雨と並んで立っていた。
「ううん、わたしのほうこそ、呼んでくれてありがとう。スーフィアさんは?」
「春ヶ原に優月を迎えに行っているよ」
笑顔でいた夏澄は、ふいにふしぎそうな顔をした。
「風花、緊張しているの?」
「うん、まあ……。春ヶ原のこと、うまくできるかなって」
「ありがとう。風花はみんなのことを考えてくれているんだね。優しい子だね」
夏澄は瞳をきらめかせて微笑む。その瞳は、まっすぐ風花を見ていた。
どきどきして、風花は目を瞬かせる。
夏澄はいつもまぶしい。こんな風にまっすぐ言葉を向けられると、余計にそう思う。さすが精霊だ。
瞳だけじゃなく、笑顔も、風花に与えてくれる優しさも。
きらきらした言葉も。青い髪と瞳をした姿も。みんなまぶしい。
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