シェア
公園に着いて、霊泉の前に立ったときだ。風花は、あれ、と思った。 今までは結界の前に立…
夏澄たちの話では、昨日、太陽がすっかり落ちたころ、夏澄たちは藤原の御泉に帰ってきたそう…
「あの、スーフィアさん……」 風花は横たわる優月を見つめた。 彼の体はところどころが…
『夏澄は優月に霊力をもどしているの。でも、優月には黙っていて』 スーフィアの声だ。 『…
「ねえ、夏澄くん……」 風花はそっと声をかける。 「優月さんが元気になるように願おうね…
「ねえ、スーフィア、風花。草花はどうするかな? 俺じゃあ、細かいことは分からなくて」 …
やがて、林に霧が流れ始める。 霧は幻影の優月の姿を覆う。 幻影の優月の姿は見えなくなった。 「こんな風に、姿を消すこともできるよ。……春ヶ原には、立貴が籠もっていた禁足地があったんだよね? もう一度、そんな場所を造るのはどう? 今度はそこで優月が休むんだ。俺、なんでも協力するよ」 霧は風花たちや優月のほうにも流れてくる。 卯の花色に近い、暖かい色をしていた。霧は風花たちを包み込む。 やわらかい布のような感触がした。 思わず、風花も頬を寄せて目を閉じた
優月は夏澄に頭を下げて、向きをかえる。 そのとき、枯れ葉を含んだ風が吹いた。 優月が…
優月さん……! 風花は駆け出した。 辺りを見回す。だが、どこにも優月の姿はなかった…
夏澄はぽろぽろと涙を落としはじめた。 夏澄の表情から、優月はもういないんだと分かった…
優月の木は泉のほとりにそびえている。目を凝らすと、木はかすかに霊力の光を放っていた。 …
風花のとなりにいた夏澄は、風花にもう一度、守護の霊力を張る。 その後、風花から離れて…
「おいで、ビー玉、竹とんぼ」 草花は小さな声でつぶやく。寝言のようだ。 「今日は泉で水…
風花は泉の前にもどり、そっと、優月の木の前に立った。 優月の木を見上げる。 「ねえ、優月さん。聞こえる?」 弱っている優月に届くか分からない。聞こえるように願いながら、風花は丁寧に話しかけた。 「草花ちゃんは今の春ヶ原を見ていないよ」 優月の姿が目の奥をよぎり、風花の声は震えた。 優月の木はかすかな放って、今までと変わらない。だが、なぜ優月の姿は見えないんだろう。 もしかして、もう精霊の姿を保てないでいるんだろうか。 「優月さん。草花ちゃんの中では