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水の空の物語 第6章 第6話

「ねえ、夏澄くん……」
 風花はそっと声をかける。

「優月さんが元気になるように願おうね」

 風花は、優月に視線をもどした。

 ……。
 目をみはる。

 優月の瞳に涙が浮かんでいるように見えた。

「優月さん……?」
 風花は優月の顔を覗き込む。

 風花の言葉で、夏澄が風花の横に立つ。同じように、優月を見つめた。

 優月の瞳を食い入るように見つめる。ずっと、そうしていた。

 やがて、意を決したように、優月の傍らにすわる。

 夏澄は地面にひざをついて、彼の顔を覗き込んだ。

「ねえ、優月。俺にできることはない?」
 夏澄の頬に水色の髪がかかる。その向こうの瞳は透明に潤んでいた。

「俺はね、優月たちが好きだよ。春ヶ原も大好きなんだ。優月たちにも草花、立貴にも、春ヶ原で幸せになって欲しいんだ」

「……夏澄さん」

 消え入りそうな、かすれた声がした。優月の声だ。

「わたしがいなくなったら、草花はどう思うでしょう」

 優月はゆっくりとまぶたを開けて、夏澄を見る。表情のない瞳だった。

「え?」
「想像で構わないので、教えていただけませんか? ……夏澄さんの幻術で見せてもらうのはどうでしょう」

 夏澄はふしぎそうに優月を見る。
 だんだんと、その瞳を輝かせ、笑顔でうなずいた。

「うんっ、待っててっ!」

 まぶたを閉じる。
 彼の体が澄んだ水色に光り出す。

 だか、その光はすぐに消えた。

 夏澄はなにか思いついたように振り返り、スーフィアと風花を手招きした。



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