水の空の物語 第6章 第14話
風花のとなりにいた夏澄は、風花にもう一度、守護の霊力を張る。
その後、風花から離れて立貴の代わりに癒やしの雨を降らせる。
飛雨とスーフィアも宙を駆けた。
飛雨は夏澄に霊力を送る。 スーフィアは植物を癒やして回り始めた。
風花はなにもできずに、木の周りをうろついた。
動物たちを診ようと思いつくが、足を止め、気がつくと立ちつくしていた。
行っても、霊力がない風花は、動物たちのためになにかできるわけではない。
風を浴びるしろつめ草が目に映る、風花は恐る恐る手で風を防ぐ。だが、なんの効果もなかった。
泉の近くのしろつめ草が萎れかかる。覆いかぶさっても、風を完全に止めることはできない。葉はゆっくりと萎れていった。
何度庇おうとしても無駄だった。
風花はなにもできず、ただ泉の周りを歩き回るだけだった。夏澄の守護の霊力で、風花だけが無傷でいた。
わたしはなにもできない。
風花は涙を堪えてずっとすわり込んでいた。
あれ……。
ただ、春ヶ原中を眺めていた風花は、目を凝らした。
木から流れていく風を目で追う。かすかに流れる風は、植物を萎れさせる。
その中で、草花たちにだけ向かっていく風があることに気がついた。その風は、しろつめ草を弱らせることはない。
今までの優月の風とは違う。
また、その風が草花たちに流れていく。ふわっと優しい印象で、草花たちを撫でた。
風花は恐る恐る、水路から草花に歩み寄った。
じっと草花たちを見つめる。
気を失っているが、草花は微笑んでいた。
うれしげに、すうすう寝息を立てている。
小毬たちもおなじだった。
さっき、彼女たちは優月の風に吹かれて次々と倒れた。だから、傷つけられたのだと思っていた。
でも、違うのかもしれない。
草花たちはただ眠らされただけのように見える。
また、風が吹く。
草花の後ろにある植物が枯れて。草花は苦しげな息をする。
だが、もうひとつの風が吹き、草花はまた微笑んだ。
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