水の空の物語 第6章 第10話
優月さん……!
風花は駆け出した。
辺りを見回す。だが、どこにも優月の姿はなかった。
公園には柔らかな朝日が差している。
優月の霊力の色に似た、優しげな朝景色だ。淡い光はいたるところにあふれているのに、優月の姿だけ見えない。
なんで……。
目に涙があふれてくる。風花はへたり込んだ。
「風花、落ち着いて……」
夏澄が風花の肩に手を置いた。
「優月はまだ精霊でいるよ。ほら……」
夏澄は左側の林を指差した。そこには弱い風が草を揺らしていた。優月の風なのだろう。
「本当に? 夏澄」
スーフィアは厳しい表情で公園内を見まわす。
「私には、もう優月の気配は読めないわ」
「かすかな気配だけど、感じるよ。優月はまだ、消えないでくれている」
「夏澄なら気配で、優月の居場所を読めるよな?」
飛雨が跳躍して、夏澄のとなりに立った。
「うん、早く捜さないと」
夏澄は一歩踏み出す。気力を集中させるように瞳を閉じた。
動かない彼の体から、揺らめくような霊力の光が発せられた。
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