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コラボ作品『0.00001~の想ひ出』
(1.)
蒼ざめた花がわたし、を
盲いた夜に潜水させる
あっぷあっぷ泳いでいる水たまり
両眼を瞑る
目盛りが溺れそうな籠を修正して
記憶の網をたぐりよせながら編む
壊れた時計の短針と長針は
いくつも積み重なってゆく
『Good night?』
『Not so good…… it’s a nightmare.I wanna sleep well like dreaming sweet memories. 』
『Hmmmm……it's time to go to bed.Here’s your candy like medicine.』
(2.)
眠れない夜。跳ねる羊を数えながら、スマホの画面を一晩中、見つめている。まだ削除できていない一番目の連絡先。指が泳ぐ。記憶は美化されてゆくもの。左胸は散り散りに引き裂かれて、まだモノクロームの海に沈んでいるのに。想ひ出のなかの声は今も鮮やかだ。鼓膜が震えて、鮮やかな音色が振動する。なつかしい声が聴きたい。指が泳ぐ。青黒い雨が降る。わたし、の街にも、あなた、の街にも。羊たちが染まってゆく。藍染め職人のてのひらのように、爪の中にまでふかく入りこむ。それなのにまだ指は泳ぐ。あなたの指は、今夜、どこを泳いでいるの。
(3.)
少女の真っ白だったワンピースに黒と青の絵の具をこぼしてしまった。目蓋を閉じたら、いまもぼうっとしろいひかりが萌芽する。指の蝶がひらひら、と舞っている。掴もうとしたら、蝶は弾け飛んで、くろとあおで満ち満ちた草原になった。汚れた羊の塗り残された余白をテイクアウトしたい。羊は生きている抽象画のように、透明な柵を跳び越えてゆく。追いかけても、追いかけても、なかなか捕まえられない。透明な柵に足を引っかける。転んで捕まえられないから、懇願するように手を伸ばす。もう真っ白なワンピースは、完全な白には戻らない。羊は嗤っている。
(4.)
銃声。流星群。空色の水飛沫。片目を開いて、片目を瞑る。夢を見ながら、時化の海を泳ぐ。船に積まれたタンクから、油が漏れてゆく。撃ち落とされた鳥。油にまみれた重い羽根。救助を待っている嘴と鳴き声。回想と追憶の波間にひとかげが揺れて、揺れて、こまかいひかりも浮かんでは沈む。海は重厚な天鵞絨のように、襞を集めてもたつく。片目を瞑って、片目を開く。夏は終わりを告げた。おおきな台風が近づいている。波乗りサーファーは陸に上がり、凪を待っている。両眼を閉じる、やがて両眼を開く。遠い空の向こう側に手を伸ばして、雲をかき混ぜろ。ロリポップキャンディを作るみたいに、翳りのある空をかき混ぜろ。
(0.00001~)
風の足跡がすべてを吹き飛ばしていった
裸足で更地に立つ
蝶も鳥も船も嵐も人影も
ワンピースも羊も絵の具も
花も時計も雨も水たまりも……
なにも残っていない
脈打つ心臓の鏡にだけ
あなたの面影が映っている
ゆめの名残だけが美しいから
ただ砂浜に立ち尽くして
水平線を眺めている
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tiwaeo_art (photo collage) × 未来の味蕾 (poetry) collaboration!大好きなアーティスト tiwaeo_artさんとアーティスト未来の味蕾のコラボ作品です。
tiwaeo_artさんが先に画像を作って下さって、『思い出だけが美しい時には』という思いで作りました、というメッセージと画像を元に、私が詩を書きました。元々、tiwaeo_artさんの作品が好きだったので、次から次へとイメージが湧いて、非常に楽しかったです。ありがとうございました。またどんなジャンルの方でもいいので、コラボの依頼もお待ちしておりますので、まずはお気軽にお問い合わせ下さいませ。
『0.00001~の想ひ出』
tiwaeo_art(photo collag)
未来の味蕾(poetry)
photo:見出し画像(みんなのフォトギャラリーより、ミテイナリコさん)
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