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詩『絆創膏のbouquet』#シロクマ文芸部
逃げる夢
逃げ続ける夢
*
休憩時間
教室の片隅で
俯いて直立しているぼく
嗤っているクラスメイト
*
眠れない夜
羊を数えながら
柔らかく反発する枕に
耳をうずめて目を瞑る
*
暗闇の絆創膏に光っているのは、いつかどこかで産み落とされた石垣。誰にも知られずに、ひっそりと眼鏡に皹が入って、見るものすべてに亀裂が生まれる。じゃあ、眼鏡を買い替えろ、ときみたちは言うのだらう。勿論、何度も買い替えたさ。買い替えたけど、亀裂は消えてゆかないのだ。
いつものように、きみがぼくの寝癖やぼーぼーに生え盛った眉毛を逮捕して嗤う。ピキッ。友達のAたちに連行されて、輪になって事情聴取を受ける。ピキピキッ。逃げ出したい。ピキピキピキッ。
『毎日、毎日、いい加減にしてくれよ!』
とうとうぼくは眼鏡を床に叩きつけて、教室から走り出した。視界はぼやけていたけれど、身体の内側は晴れ晴れとした空のようだった。
ガラガラガラ、学校が灰色コンクリートの雪崩を起こす。クラスにうまく馴染めていないぼくは、固くて分厚い石垣で自分を囲っていたのだ。
*
早朝。合わせ鏡で寝癖をチェックして、整髪料で念入りに寝かしつける。ぼくのなかの跳ね馬が飛び出したみたいな寝癖。いっそランダムにセットしてみよう。たまにはじゃじゃ馬を解放せよ!眉毛は雑誌で研究して、キリリ、と整えた。
そして眼鏡の代わりに、奮発して買ってもらったソフトのコンタクトを装着した。完成!鏡のなかのぼくまで、ソフトな面持ちになっていた。
*
今日からは
逃げない朝
『おはよう』と自分から、みんなに挨拶する教室の入り口。
ジャスト8:30、革命の鐘が鳴る。
『誰?あのイケメン誰?』
『知らない。ねえ、誰ー?』
背後で女子たちが騒いでいる。
もう視界は割れない。
絆創膏がはらり、剥がれて、花のように散っていった。
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photo:見出し画像(みんなのフォトギャラリーより、kei02さん)
photo2:unsplash
design:未来の味蕾
word&poem:未来の味蕾
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