![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/125892729/rectangle_large_type_2_1455abd8b727c953f8a7ba0bbf50c5a5.png?width=1200)
詩『SANAGI#~#最後の日~』#シロクマ文芸部
最後の日、私がとうとう羽化するカウントダウン、2023.12.31.23:59。新年まであと一分を切った。毎年、ひとり寂しく年を跨いだ10年間の匂いと色と汗が染みついたしろい部屋。所々、壁が汚れて、凹んでいる。狭い洋式トイレの便座は、夜中にふらふらで覚醒したときに、崩れおちるように座って割れてしまった。もがき続けたもうひとりのわたし、の胎動の痕跡とその証明書。
(目覚メナサイ、時ハ満チ満チタ)
ぺりり、と蛹の形をしたワンルームマンションは、しずかに剥がれ落ちていった。ちいさな殻をなかなか破れなくて、膝を抱えて蹲っていた日々。来年こそは扉を開けて、この10年間から卒業してゆくのだ。卒業おめでとう、わたし。
こわれものみたいな淡いいろの羽根をそっと解放する。真新しい未来を睫毛の止まり木に乗せて、ゆうるり、と瞬きしながら飛んでゆく。ひかりの羽ばたき、スローモーションで弾けるセピア色の記憶たち。泡、溢れ出すシャンパンのような慟哭。5、4、3、2、1……一斉に……
『A Happy New Year!』
『あけおめ』で溢れるスマホのラインラッシュ。テレビの中の馬鹿騒ぎ。コロナの自粛要請は徐々に薄れてゆく。マスクを外す機会が増えた。地続きの地平線は、永遠につづくかと思われた。しかし時間は地平線ではない。自分の足で立ち上がれ。
(Hello、hello、もう一度、産み落とされたあたらしいわたし、)
もうこの手のひらは迷わない。
空を翔けて、新世界へ。
何度だって、扉を開け続けるだろう。
Good-bye、2023.12.31、最後の日、ありがとう。
![](https://assets.st-note.com/img/1703809098709-hLYcRJXpTd.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1703769079616-RlWgcPdkM9.jpg?width=1200)
*過去作イラスト「SANAGI#」からイメージして、詩を書きました。
photo:見出し画像(みんなのフォトギャラリーより、Perfect Disco さん)
photo2:Unsplash
design:未来の味蕾
word&poem:未来の味蕾
イラスト:未来の味蕾
いいなと思ったら応援しよう!
![未来の味蕾](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/162566954/profile_2c4feb4d7f5df474983311ca96c4d41f.png?width=600&crop=1:1,smart)