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詩『季節泥棒』#シロクマ文芸部

爽やかな季節が盗まれてゆく。飴玉の缶詰、底に薄荷はっかは積もるのに。ダイアモンド、ルビー、サファイア、エメラルド、アメジスト、アクアマリン、ローズクォーツ、キャッツアイ……色とりどりに輝く石が指や首、手首を彩るけれど、季節の色はひとつではない。そのなかでも清々しい秋や春が最近、ごそっと減ってきているのだ。夏が駆け足で始まり、秋を浸蝕する。冬が突然、吹き荒れて、春が遅刻する。つまり春夏秋冬のうち、過ごしやすい時間が蝕まれている。嘆息。春の淡いパステルカラーや秋の落ち葉のおしゃべり、季節が近づいてくる足音の助奏。あの色調や音色がたまらなく愛おしい。

ポケットに手のひらを埋める。拳骨になりきれなかった不器用な掌を。そしてポケットのなかで、模索している。蝶々になるまえのペールピンクのさなぎ。爽やかな季節の空を探している。このちいさなホームを打ち破って飛んでゆけ、あの空へ向かって、言葉になるまえの衝動を投げつけて御覧。ほら、明日がもうすぐそこで寝息を立てている。神よ、ぼくたちの朝を祝いたまへ。爽やかな季節よ、元の背景に鎮まりなさい。泥棒さん、欠けたパズルのようなこの世界の季節を変換して、返還してください。この薄荷ドロップスの山と引き換えにして。

♯どれみふぁそらしど♯どしらそふぁみれど♯どどどどど♯どれ♯だれ♯どれみ♯あさっての♯そらは♯だれのてに♯わたしたち♯ぼくたち♯どこに♯むかって♯あるいてゆく♯

photo:見出し画像(みんなのフォトギャラリーより、蒼龍葵さん)

photo2:Unsplash
design:未来の味蕾
word&poem:未来の味蕾

#シロクマ文芸部
#爽やかな

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未来の味蕾
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