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SF、読書のよろこびマガジン

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大人になってからSFの楽しみを知った人の記録。本が好き、ゲーム興味ないかたはここで。
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2024年11月の記事一覧

【マンガ感想】ジョージ秋山と詰み本の呪い「ドストエフスキーの犬」など

【マンガ感想】ジョージ秋山と詰み本の呪い「ドストエフスキーの犬」など

ジョージ秋山は毒薬だ。
コンプレックスまみれのうじうじした男がひとりで傷ついて、通りすがりの女を横目で見て、欲情をおさえきれずに乱暴する。した方のくせに自分に嫌気がさして布団をかぶって泣く。死ぬ。

ジョージ秋山の代表作「浮浪雲」を父親が20年以上前に読んでいた。
今、それとは関係なくKindleで息子のぼくが同じ作者にたどり着いたことにちょっと恐怖を感じている。
なんで嫌悪感があるのに自分はジョ

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福本伸行はずっと、人が本気になる瞬間を書いている「無頼な風」

福本伸行はずっと、人が本気になる瞬間を書いている「無頼な風」

福本伸行「無頼な風 鉄」を読みました。
初期の人情マンガは「カイジ」「アカギ」でブレイクしたあとと違うんだろうなと思っていたら、初期福本、いいんです。どれも今の漫画にないアナログな力強さがあって、根っこの部分は変わっていない。
独特のテンポも言い回しも、あか抜けないギャグも、ずっと変わっていない。
枠線が歪んでたり、アシスタントの描いたモブの顔のタッチが明らかに違ってたり、手描きの味がする漫画は久

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アメリカの価値観 VS アジアの神秘「世界しあわせ紀行」

アメリカの価値観 VS アジアの神秘「世界しあわせ紀行」

久しぶりのテレビで「外国人の日本褒め」を浴びて気持ち悪かったけど、これを読んだら治った。
世界の人の大半は、外国人の評価がなくても、なにが誇りでなにが欠点か自分で決めるし、そもそも他人を気にしない。

これは、日本にも住んでいた鉄火巻き好きのアメリカ人記者が、「しあわせ」とされている国をめぐり、しあわせ迷路に迷い込む一冊だ。

読むだけでふつうに驚けるし、実際に旅行する100分の1かもしれないけど

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ファンタジー小説への苦手意識が減った

ファンタジー小説への苦手意識が減った

ほぼ初めての筒井作品だったけど、あまりに文章が落ち着いてて心地よくて、過酷な場面でもずっと幸せだった。
「超能力を持つ人々が出てくるSFファンタジー」を読んでいる感覚はなくて、旅行記を読んでいるみたいだった。

主人公はラゴスという青年。
「スカシウマ」に乗って南を目指している。この世界の人々は心を読んだり超能力を使ったりできるようだが、科学技術は発達していない。

最初の話に出てくる能力は「転移

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【読書】珍しいSFの芥川賞作家。高山羽根子「暗闇にレンズ」

【読書】珍しいSFの芥川賞作家。高山羽根子「暗闇にレンズ」

なんでもっと話題にならんのや

高山羽根子作品を3作読んだけど、もっと話題になってないとおかしくないですか?

感覚が今っぽい。
男に頼らない、小柄でインドア派だけどひとりで平気そうな女性が主人公。

設定はSFが入ってるけど、読んでいる最中は純文学というか。解釈はある程度読者にまかせられていて、面白いけどスッキリは終わらない。難解だけど押しつけがましくない。ふしぎなバランス。

「暗闇にレンズ」

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