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国語教育

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国語に関する記事を集めたものです。自身の仕事に関係するものを挙げていくので、質はそれなりに高いものとなっています。写真は東博の書道具の展示を撮影したものです。
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#古典

2023年度大学入試共通テスト 国語、講評

2023年度大学入試共通テスト 国語、講評

少し遅くなりましたが、毎年恒例の共通テストの講評です。
今年の問題は良問であり、ぜひとも解いた上で復習して欲しいかなと。

第1問 近代以降の文章(評論文)
【文章Ⅰ】柏木博『視覚の生命力  イメージの復権』
【文章Ⅱ】呉谷充利『ル・コルビュジエと近代絵画  二〇世紀モダニズムの道程』

 表象文化論やイメージ論、あるいは身体論などで良く取り上げられるテーマであり、特に【文章Ⅱ】は多木浩二の『目の

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昔も今も変わらない古典の雑話―『枕草子』「思はむ子を法師になしたらむこそは」を通して―

昔も今も変わらない古典の雑話―『枕草子』「思はむ子を法師になしたらむこそは」を通して―

 今日は古典関係の記事の番外編的な内容で、古典を少しでも身近に感じるような機会になればという記事なっています。
 今回も『枕草子』から取ってきました。随筆ということもあり、今でも共感できるような話が多いので、題材に向いているという側面があります。
 
【本文】
 思はむ子を法師になしたらむこそは、いと心苦しけれ。さるは、いとたのもしきわざをただ木の端などのやうに思ひたらむ、いといとほし。
 精進の

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古典の勉強のコツを体験的に感じるー『枕草子』「すさまじきもの」を通してー

古典の勉強のコツを体験的に感じるー『枕草子』「すさまじきもの」を通してー

 古典の難しさ、特に高校一年生の後半以降から難しく感じる理由を体験的に書いた記事です。古典が好きな人は難しい点を知ることでより楽しめるように、古典が苦手な人は少しでも理解できるようになるために読んでもらえたらと思います。今回の本文は『枕草子』の「すさまじきもの」の一部です。「すさまじきもの」は割と有名な部分なので、知っている人も多いと思いますが、だからこそ今回の話題にはうってつけと言えます。まずは

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猫の日特集ー猫が出てくる古典の話、『枕草子』と『徒然草』ー

猫の日特集ー猫が出てくる古典の話、『枕草子』と『徒然草』ー

猫の日ということで、猫が出てくる古典作品をサクッと紹介する記事です。
1つめは『枕草子』です。猫を寵愛すぎるあまり起こった事件とも言える話です。現代でも猫と対になって出てくる、例の動物も居る辺り現代と変わらないところを感じさせます。

第七段(第九段)
 
 うへにさぶらふ御猫〔おほんねこ〕は、かうぶり得て、「命婦〔みやうぶ〕のおとど」とて、いとをかしければ、かしづかせたまふが、端に出でたるを、乳

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高校生向け短期集中日本文学史(古典編)#5(総合演習)全5回

高校生向け短期集中日本文学史(古典編)#5(総合演習)全5回

文学史は地味ながら意外と定期テストで出題されて特典源になることも多いです。そのような文学史について素早く勉強をする全5回のシリーズ記事です。近現代編は既にアップしているので近現代の文学史をご覧ください。

今回は最終回ということで、特に重要な項目だけをピンポイントに復習する総合演習です。一問一答形式で、必要な知識を総ざらいするための回です。また解説の最後に要点だけをチェックする補遺ノートを付けてお

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高校生向け短期集中日本文学史(古典編)#4(近世の文学:江戸時代)全5回

高校生向け短期集中日本文学史(古典編)#4(近世の文学:江戸時代)全5回

文学史は地味ながら意外と定期テストで出題されて特典源になることも多いです。そのような文学史について素早く勉強をする全5回のシリーズ記事です。近現代編は既にアップしているので近現代の文学史をご覧ください。

 近世の文化について上方から江戸へと文化の中心地が変化し、それぞれの時期の文化を元禄文化と化政文化と呼んだという話が定番としてあるが、そのような時代的な捉え方よりもジャンルごとの動向を追う方が中

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高校生向け短期集中日本文学史(古典編)#3(中世の文学:鎌倉時代〜安土桃山時代)全5回

高校生向け短期集中日本文学史(古典編)#3(中世の文学:鎌倉時代〜安土桃山時代)全5回

文学史は地味ながら意外と定期テストで出題されて特典源になることも多いです。そのような文学史について素早く勉強をする全5回のシリーズ記事です。近現代編は既にアップしているので近現代の文学史をご覧ください。

 中世の文学は、貴族の世から武士の世へと転換した影響を受けたものと言えます。ただ一方で、中古以前の文学の影響が全くなくなったのではなく、消化されて中世らしい文学へと変化し、近世文学へとつながる基

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高校生向け短期集中日本文学史(古典編)#2(『源氏物語』以降〜中古の文学)全5回

高校生向け短期集中日本文学史(古典編)#2(『源氏物語』以降〜中古の文学)全5回

文学史は地味ながら意外と定期テストで出題されて特典源になることも多いです。そのようなは文学史について素早く勉強をする全5回のシリーズ記事です。近現代編は既にアップしているので近現代の文学史をご覧ください。

 中古の文学を考える上で、A『源氏物語』の成立頃である1000年前後〜1010年頃は重要な時期となる。日本の随筆文学の嚆矢であるB『枕草子』、日記文学・物語文学の流れを汲んだ『源氏物語』、C八

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高校生向け短期集中日本文学史(古典編)#1(『源氏物語』以前の文学)全5回

高校生向け短期集中日本文学史(古典編)#1(『源氏物語』以前の文学)全5回

文学史は地味ながら意外と定期テストで出題されて特典源になることも多いです。そのような文学史について素早く勉強をする全5回のシリーズ記事です。近現代編は既にアップしているので近現代の文学史をご覧ください。

 日本の文学史を考える上で、中国の影響を無視することはできない。例えば、口承文学から記載文学への変化は漢字の輸入が大きく影響している。また、詩歌やA歴史書に重きが置かれたのも中国において漢詩文や

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古典の雑話#5 仮定形? 已然形? なんで現代語と違う部分があるの??

古典の雑話#5 仮定形? 已然形? なんで現代語と違う部分があるの??

古典において〇〇形と言えば、未然形、連用形、終止形、連体形、已然形、命令形のことですが、これらについて少し無駄知識を紹介しながら少しでも活用表や活用形、さらには助動詞の接続など暗記が面倒な部分の助けになるような話をしたいと思い、その一つとして今回は已然形を取り上げてみました。

仮定形? 已然形? なんで現代語と違う部分があるの??

 現代語だと已然形ではなく仮定形となっており違和感を得た人も多

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のんびり読書案内 番外編 国語系辞書紹介

のんびり読書案内 番外編 国語系辞書紹介

 今回は、のんびり読書案内の番外編として、手元にあると便利な机上におけるサイズの辞書をいくつか紹介したいと思います。画像は著作権の関係もあり、省きますが検索すればすぐに出てくるので、気になったものがあればぜひ調べてみてください。

国語辞典
・明鏡国語辞典(大修館書店)
机上に置けるサイズの中で文法の説明が特に丁寧な辞書。単語の意味以外にも文法的なことも調べることがある人は手元に置いておきたい一冊

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古典の雑話 #4 五十音図に関する無駄知識と注意点

古典の雑話 #4 五十音図に関する無駄知識と注意点

 今日は一つの実例として、というよりも文法を一気に学ぶときに少しでも勘違いしないようにする注意点について少し紹介したいと思います。古典は現代と違うものであると意識しないとドツボにハマりやすいポイントと言っても良いかもしれません。本日は五十音図の話を紹介していきます。

○五十音図について

 五十音図は現代語とほとんど同じで、わざわざ覚える必要はないと感じる人が多いと思います。実際それで良いのです

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古典の雑話#3 文法・知識重視の理由

古典の雑話#3 文法・知識重視の理由

 古典の雑話はいよいよ3回目なので、そろそろ古典嫌いを少しでも無くすために問題の核心に迫っていきたいと思います。

 小学生・中学生でも古典教材を扱うことはありませんが、基本的には最低限の単語の知識さえあれば現代語訳が付いているという前提で高校入試等の試験問題は作られているためそこまで難易度は高くなく、むしろ内容を理解しきることが重視され、読解力の問題となっていることが多いです。

 そのため、実

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古典の雑話 #2 海外の人にとっての古典とは

古典の雑話 #2 海外の人にとっての古典とは

前回は古典が苦手、あるいは嫌いという人が日本では多いという点、また少しでも古典嫌いを無くす方法の初歩について話しました。
古典嫌いについては根深いので、少しずつ何度かに分けて少しでも古典の見え方が変わるようにしていけたらと思っています。

今回は海外の人と大きく雑に言いましたが、要は外国籍の人及び帰国生などの海外で一定期間教育を受けた人を指します。
東南アジア、東アジア、ヨーロッパ及びアメリカのお

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