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高校生向け短期集中日本文学史(古典編)#2(『源氏物語』以降〜中古の文学)全5回

文学史は地味ながら意外と定期テストで出題されて特典源になることも多いです。そのようなは文学史について素早く勉強をする全5回のシリーズ記事です。近現代編は既にアップしているので近現代の文学史をご覧ください。

 中古の文学を考える上で、A『源氏物語』の成立頃である1000年前後〜1010年頃は重要な時期となる。日本の随筆文学の嚆矢であるB『枕草子』、日記文学・物語文学の流れを汲んだ『源氏物語』、C八代集の3番目の歌集である『 ① 』、藤原公任が作成した歌謡集である『和漢朗詠集』、『和泉式部日記』や『紫式部日記』といった日記文学も書かれた。
 その後の文学作品の多くは『源氏物語』の影響を受けたものがほとんどである。物語については、中世の擬古物語につながる物語の流れと、歴史的事実に題材を求めたD歴史物語の流れができ、『源氏物語』の影響が多かれ少なかれ感じられるものとなっている。日記文学については『源氏物語』に言及している菅原孝標女の『 ② 』を筆頭に中世の日記文学につながる流れが見られる。
 そのような『源氏物語』を中心とする文学の流れとは別に説話集の流れもあり、特に平安時代末期から鎌倉時代初期の時期に作られた『 ③ 』は仏教説話・世俗説話のどちらも収められた作品であり、中世において説話が流行する基盤を作ったと言える。

問1、空欄①〜③に当てはまる作品を答えなさい。

問2、A『源氏物語』に関して、『源氏物語』や作者の紫式部についての説明としてふさわしくないものを1つ選びなさい。
ア、『源氏物語』は全五十四帖(巻)の長編物語であり、最後の十帖は宇治を舞台とするため「宇治十帖」と呼ばれている。
イ、『源氏物語』は主人公である光源氏の恋愛・栄華から晩年までの一生を描いた正編と、光源氏の没後の子供たちの世代を描いた続編からなる。
ウ、桐壺〜藤裏葉の第一部では光源氏の誕生、須磨退去の不遇、栄華の絶頂が描かれており、亡き母桐壺更衣への執着が反映された藤壺やその姪の紫の上との交渉を含んでいる。
エ、若菜上〜幻までの第二部では晩年の光源氏の苦悩が中心となっており、新しい妻として迎えた女三の宮の不義により薫が生まれるという自身の過去の不義が投影されたかのような展開となっている。
オ、匂宮〜夢の浮橋までの13帖の第三部では光源氏の死後、宇治を舞台として息子の薫を主人公とした物語が描かれる。薫は宇治の姫君との満たされぬ恋に悩む。
カ、作者の紫式部は中宮定子に仕えた女房であったが、定子の父である藤原道長の存在が『源氏物語』の執筆に影響を与えたという説もある。
キ、江戸時代の国学者である本居宣長は『源氏物語玉の小櫛』で『源氏物語』を「もののあはれ」と捉えて、評価したことで知られている。

問3、B『枕草子』に関して、次の『枕草子』や作者についての説明文の空欄を埋めて説明文を完成させなさい。

 『枕草子』の作者である( 1 )は、梨壺の五人の一人である清原元輔の娘であり、中宮( 2 )に仕えた人物である。そのような経験の回想が『枕草子』の日記的章段に記されており、例えば『長恨歌』の作者である( 3 )の詩を踏まえた「香炉峰の雪いかならむ」という(2)の質問に(1)が当意即妙な返答をしたという逸話も紹介されている。中学生の教材として多く取られることの多い類従的章段は「ものづくし」と呼ばれている。いわゆるエッセイに近い随想的章段では作者独自の観察力や客観性などによって自然や人間の断面が的確に捉えられている。『源氏物語』の「もののあはれ」に対して、「をかし」の美が表現されている。

問4、C八代集について、八代集のうち1185年を鎌倉時代の始まりと考えた場合と、1192年を始まりとした場合で成立した時代が異なる勅撰集の名前を答えなさい。

問5、D歴史物語に関して、歴史物語の説明としてふさわしいものを1つ選びなさい。
ア、歴史物語の最初の作品である『栄花物語』は藤原道長の栄華を中心に貴族社会の歴史を描いた作品で、紀伝体で書かれた物語である。
イ、歴史物語の中の最高峰となる『大鏡』は藤原道長の権勢を批判を交えつつ中立的に評価した作品で、紀伝体で書かれた物語である。
ウ、『大鏡』の後を受けた『今鏡』は『大鏡』の語り手だった大宅世嗣の孫娘が語る形式で、編年体で書かれている。
エ、『堤中納言物語』は堤中納言を中心とした特殊な歴史物語で、天皇に仕える官人から見た歴史を編年体で軽やかに描き出している。


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解説
 中古文学については作品名と作者だけでなく、作品の内容や背景など細かく理解しないといけないという点でやや暗記事項が多いのが特徴です。1つ1つ丁寧に覚えていきましょう。

を筆頭に中世の日記文学につながる流れが見られる。
 そのような『源氏物語』を中心とする文学の流れとは別に説話集の流れもあり、特に平安時代末期から鎌倉時代初期の時期に作られた『 ③ 』は仏教説話・世俗説話のどちらも収められた作品であり、中世において説話が流行する基盤を作ったと言える。

問1、空欄①〜③に当てはまる作品を答えなさい。
①八代集の3番目の歌集である『 ① 』とあるので、『拾遺和歌集』が正解となります。八代集の暗記については出題する人により大きく異なるため、定期テスト対策として授業中や出題範囲に暗記を指示されない限りは1番目の『古今和歌集』と8番目の『新古今和歌集』だけ暗記しておけば良いです。
②菅原孝標女の『 ② 』とあるので、『更級日記』が正解となります。『源氏物語』の影響がわかる作品の例として良く授業で扱われる作品なので、作者名とともにセットで覚えておきたいところです。
③「平安時代末期から鎌倉時代初期の時期に作られた『 ③ 』は仏教説話・世俗説話のどちらも収められた」という部分まで読まないと正解は本来できないのですが、中古の文学として有名な説話集は『今昔物語集』と暗記しておけば解答できるのでまずは中古の説話は『今昔物語集』と暗記してしまいましょう。

問2、A『源氏物語』に関して、『源氏物語』や作者の紫式部についての説明としてふさわしくないものを1つ選びなさい。
カ、作者の紫式部は中宮(×定子)に仕えた女房であったが、定子の父である藤原道長の存在が『源氏物語』の執筆に影響を与えたという説もある。
→紫式部が仕えたのは中宮彰子です。なお、彰子の父である藤原道長という説明は正しいものとなっています。
その他の選択肢については古典を受験で使う場合は必須の知識であり、また定期テストの試験範囲の場合も絶対に押さえておきたい内容なので、必ず覚えておきましょう。この記事を読んでいる人にとってどれほど常識かはわかりませんが古典指導者の多くが『源氏物語』を愛読しており、多く出題したいと考えがちなので試験範囲に含まれる場合は要注意です。

問3、B『枕草子』に関して、次の『枕草子』や作者についての説明文の空欄を埋めて説明文を完成させなさい。

 『枕草子』の作者である(1 清少納言)は、梨壺の五人の一人である清原元輔の娘であり、中宮(2 定子)に仕えた人物である。そのような経験の回想が『枕草子』の日記的章段に記されており、例えば『長恨歌』の作者である(3 白居易/白楽天)の詩を踏まえた「香炉峰の雪いかならむ」という(2)の質問に(1)が当意即妙な返答をしたという逸話も紹介されている。中学生の教材として多く取られることの多い類従的章段は「ものづくし」と呼ばれている。いわゆるエッセイに近い随想的章段では作者独自の観察力や客観性などによって自然や人間の断面が的確に捉えられている。『源氏物語』の「もののあはれ」に対して、「をかし」の美が表現されている。

『枕草子』に関する基礎知識をあつめた説明文なので、『枕草子』が試験範囲の場合はよく読んでおきたいところです。なお、白居易については『長恨歌』が『源氏物語』にも影響していると言われており、当時の教養として白居易の作品があったことも押さえておきましょう。

問4、C八代集について、八代集のうち1185年を鎌倉時代の始まりと考えた場合と、1192年を始まりとした場合で成立した時代が異なる勅撰集の名前を答えなさい。
答え『千載和歌集』
一見、不思議な問題ですが、鎌倉時代は1192年からと指導してきた歴の長い教員にとって、1185年に変わったという事実は衝撃的だったらしく、『古今和歌集』〜『詞花和歌集』が中古、『千載和歌集』と『新古今和歌集』は中世と分けて紹介する指導がマイブームになっていることがあります。

問5、D歴史物語に関して、歴史物語の説明としてふさわしいものを1つ選びなさい。
ア、歴史物語の最初の作品である『栄花物語』は藤原道長の栄華を中心に貴族社会の歴史を描いた作品で、(×紀伝体)で書かれた物語である。
→中古において唯一編年体の歴史物語なので注意して覚えておきましょう。

イ、歴史物語の中の最高峰となる『大鏡』は藤原道長の権勢を批判を交えつつ中立的に評価した作品で、紀伝体で書かれた物語である。
→これは正解です。
ウ、『大鏡』の後を受けた『今鏡』は『大鏡』の語り手だった大宅世嗣の孫娘が語る形式で、(×編年体)で書かれている。
→紀伝体です。なお、「大今水増」(だいこんみずまし)という暗記法で知られている歴史物語の「四鏡」のうち、中世の2作品(『水鏡』と『増鏡』)は編年体へと変化するため注意が必要です。
エ、(×『堤中納言物語』は堤中納言を中心とした特殊な歴史物語で、天皇に仕える官人から見た歴史を編年体で軽やかに描き出している)。
→『堤中納言物語』は、中世の擬古物語につながる物語の流れを代表的な作品で、歴史物語ではなく、短編集の物語となっています。ジャンルも誤りで、しかも作品の説明も全く合っていないので要注意です。

補足
日本史で教えられることが多い勅撰漢詩集の『凌雲集』、『文華秀麗集』、『経国集』は出題者の趣味によるところが大きいので、試験範囲をよく見て確認しておくと良いと思います。


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