MASYU
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一方、アイは豚達を手作り小屋へと連れて行った。 そしてその後、涙によってデターに戻ったメデタを再び人化する為の培養液を取りに一旦研究所へと戻った。 アイが向かった先は、メデタと最初に出会った第5研究室。 その部屋にはアイが研究と実験のために培養液に浸けられた昆虫が棚の上に沢山並べられている。 「あったわ。これなら丁度良いわね。」 アイはデスクの引き出しから手の平サイズの小さなスティック状の容器を取り出した。 それから冷蔵庫の中から緑色の培養液が入ったビーカーを取り出
研究所2階へと到着した3人。 「社長こちらの研究室になります。」 第7研究室と書かれた部屋をルイスはコンコンとノックした。 「はい!どうぞぉ~。アイちゃんかね?」 マーブル博士が振り向くと驚いた顔をしている。 「おぉ‼︎どうしたんじゃ~⁈こりゃたまげたわい!珍客中の珍客じゃの~ジョンよぉ‼︎ 世界のジョンがこんな辺ぴな所に何の用事じゃぁ?」 「マーブル兄さんご無沙汰しています。 ちょっと近くまで来ていたもので。久しぶりに会いに来ました。」 『ピギー・ジョン』その男は養
時は遡り1年前の事。 研究所から1キロ程離れた山道を1台の貨物トラックが走っていた。 その貨物トラックには『ピギーズピッグファーム』と書かれている。どうやら養豚場から豚を運んでいるようだ。 時間は早朝5時過ぎ頃。 右は絶壁、左は岩壁。道は細く舗装もされていない離合が難しい程の険しい道を進んでいた時だった。 それは突然起こった。 地震だ。 トラックは横揺れに合いながらもそのまま走行を続けた。なぜなら荷台に積んでいる豚は高級豚のイベリコ豚。 舌の肥えた上流階級の富裕層達
その頃研究所に一台の車がやって来た。 森林の中にある古びた研究所には似つかわしく無い黒の高級リムジンだ。 その車中には白髪オールバックで口髭を蓄え葉巻をくわえたスーツ姿の紳士風の男性が足を組んで座っている。 黒い高級リムジンは施設入り口の前に横付けで停まった。 するとサングラスに七三分けのボディガードらしき男性2人が車から出てきた。 1人はすらっと細マッチョ系で、もう1人はガッチリ太マッチョ系。 細マッチョのボディガードが後部座席のドアを開けると中から白髪口
「そうなんですか?まさか目から出る涙が昆虫の人化を抑える効果があったなんて!」 「そうなんじゃ。しかもデターの姿に戻ったのは良いんじゃが、言葉はそのまま話せとった。不思議じゃ。」 「えぇ?!覚えた言葉はそのままで昆虫に戻ることが可能という事ですか?これは世紀の大発見かもしれませんねぇ博士!」 「あぁ、これはまさに大発見じゃよ‼︎ そうじゃ、アイちゃん。メデル君の培養液の予備はあったかのぉ?メデタ君が戻ってきたら必要じゃろうから用意しておいてくれるか。」
そして一方、メデタは給仕室の前に来ていた。 「さっきマーブル博士が出て来たけど何の用事だったんだろう?まぁいいか。」 給仕室の中に入ると、すぐに玉ねぎの匂いに気付いた。「ん?玉ねぎのみじん切り、何でそのままなんだ?博士かな?」 メデタはおもむろにみじん切りにされた玉ねぎを手ですくい匂いを嗅いぐと、なんとなく顔の前でそれを握り潰した。 するとメデタは「あっ!」と声をあげると、メデタの目に玉ねぎの汁が飛び散った。 すると目には涙がジワジワと溜まり始め、それはポロポロ
一方、研究所の外へと出てきたアイは、施設を取り囲む様に生い茂った森林の中を下を向いて歩いていた。手には大きめのナイロン袋を持っている。 「どんぐり、どんぐり。どこかな~、どんぐりちゃん。」 アイは木の付け根を主に見回しながらドングリを探している。 すると落ち葉の間からドングリらしき物が見えた。 「よ~し!まずは1個目発見したわ!このドングリはコナラね、小さくて可愛い。この調子でどんどん探しましょう。 あっ!あそこにも!あっ!ここにもあった!」 アイは無我夢中でドン
マーブル博士はムカデ人間の所へ向かった。 倒れたままのムカデ人間の前に着くとムカデ人間は気配に気付いたのかピクッと身体が動いた。 「ウ、ウ~。」と言うかすかな唸り声が博士の耳に聞こえた。 「すまんかったな。わしらの研究の為とは言え、こんな姿に変えてしまって。本当にすまんかった!」 マーブル博士は目に涙を浮かべた。するとその涙が頬を伝ってムカデ人間の顔に涙のしずくが落ちた。 すると不思議な事にムカデ人間のその巨体はみるみるうちに小さくなり人間の姿へと変わった。 マーブル博
「メデルマネー?!なんかカッコいい名前!」 「本当じゃなぁ!イカしたネーミングじゃよ!」 「あ、ありがとうございます。この通貨のアイデアはメデルさんの手紙がキッカケでした。メデルさんの真似をして考えたお金ということで、『メデル真似』からの『メデルマネー』!なんてどうですか?」 「ぶあっはっはっはっ!!!」 マーブル博士はひとり笑いのツボに入った。 「何よその理由、カッコいいと思って損したわ!でもメデタが考えたんだから『メデタマネー』でも良いんじゃないの
「博士、この部屋はたしか所員すらも立ち入り禁止の部屋のはずですが?」 「そうじゃ。じゃが、もう時は来たようじゃ。芽が出たんじゃよ。」 「芽?ですか?」 マーブル博士は立ち入り禁止の部屋の鍵を開けた。 中に入ると部屋一面に植物の植えられたプランターが置かれている。 「わしは昆虫と植物の研究を長い間してきた。かつてわしの右腕だった植物専門の博士がおったんじゃが、若くして病気で死んでしもうた。彼は病床でこんな手紙を書いてわしに渡した。アイちゃん、これじ
「何事じゃ?!他の研究室からのアラーム警報!検体に何か異変が起きたのかもしれん!急いで行くぞ!」 マーブル博士の後に付いてアラームの鳴る研究室へと向かった。 赤いアラームランプが辺りを異様な雰囲気に染めている。 問題の研究室を覗くと、中で何かが暴れている。よく見るとムカデの様にたくさん手の生えた人間がいる。 「あれはムカデを検体にしたムカデ人間じゃ。人化はしたものの気性が荒すぎる。失敗じゃ。どっちにしろこの研究は中止じゃから良いんじゃがな。」 「
メデタは真剣な表情でアイの目を見つめて話し始めた。 「僕ら、デター。いや、人間の呼び方でゴキブリは、遥か昔から子孫繁栄を繰り返し逞しく生き延びてきた。 僕は先祖を誇りに思っている。だけど、人間達は僕らを害虫呼ばわりして忌み嫌ってきた。今でもそうだ。僕らは過去の経験を活かして種が絶えない様に強く進化してきた。ただ一つだけ変わらないものがあった。それはあるメッセージ。」 「メッセージ?」 アイは集中してメデタの話を聞いている。 「ああ、僕らの『遺伝的思考』に刷り
とある町外れの山道を奥へ奥へと進むと森林の中に突然、だだっ広い開けた場所が現れる。 しかしその場所は辺り一面、手入れがされていないために掻き分けながら進まないといけないほどに雑草がボーボーに生い茂っている。 だがよく見ると丁度真ん中辺りに車の轍によって出来たであろう一本道。 その道を真っ直ぐに進んで行くと少し古びた謎の建物が現れる。 見上げると植物の蔓が這うように伸びに伸びては、びっしりと張り付いているその壁には『マーブル・バイオ科学研究所』というこ