第11話 神隠し
時は遡り1年前の事。
研究所から1キロ程離れた山道を1台の貨物トラックが走っていた。
その貨物トラックには『ピギーズピッグファーム』と書かれている。どうやら養豚場から豚を運んでいるようだ。
時間は早朝5時過ぎ頃。
右は絶壁、左は岩壁。道は細く舗装もされていない離合が難しい程の険しい道を進んでいた時だった。
それは突然起こった。
地震だ。
トラックは横揺れに合いながらもそのまま走行を続けた。なぜなら荷台に積んでいる豚は高級豚のイベリコ豚。
舌の肥えた上流階級の富裕層達が楽しみにしているのだ。雨が降ろうが槍が降ろうが、たとえ地震が起きて土砂が降ったとしてもそれは同じだ。なんとしてもイベリコ豚を運ばないといけないのだ。
すると上の方からゴォォォ!と言う不気味な音が聞こえてきた。
それはなんと地震の影響で山の岩壁が剥がれ落ちていたのだ。
ゴォォォオオオオ‼︎‼︎という音はどんどん大きくなっていく。
そして大量の土砂と岩が道の上に崩れ落ちた。
トラックは下敷きになる事は無かったが土砂が道を塞いでしまい先へ進む事が出来なくなった。万事休すだ。道が塞がれてしまってはどうしようもない。と諦めかけていた時だった。
2回目の地震が起きた。今度は縦揺れだ。
すると地面にバキバキバキバキ‼︎と亀裂が走った。そして道はゆっくりと傾き始めトラックの車体もそれと同時に傾き始めた。
運転手は「助けてくれーー‼︎」と叫んだが辺りには人気は無く、いるのは荷台に乗せられたイベリコ豚達だけ。
運転手は車を停車させて運転席から降り、急いでその場を離れた。
トラックはゆっくりと傾き滑り落ちる様に崖下へと放り出されたのだった。
そしてトラックは運良く巨木の上に落ちた事でそれがクッションとなり落下による、爆発は避けられた。
逆さまに落ちた事で中にいた7匹のイベリコ豚達はトラックから放り出されてしまった。
そして突然の事に驚いたイベリコ豚達はそれぞれ散り散りになって逃げて行ってしまい行方が分からなくなった。
逃げてしまった豚達はすでに引き取り手が決まっていた為に、事故による取引先への損害は大きなものとなった。
その為この事故は新聞やネットニュースでも大きく取り上げられ『イベリコ豚の神隠し?!』などと言われ大きな話題となったのだった。