第3話 ムカデ
「何事じゃ?!他の研究室からのアラーム警報!検体に何か異変が起きたのかもしれん!急いで行くぞ!」
マーブル博士の後に付いてアラームの鳴る研究室へと向かった。
赤いアラームランプが辺りを異様な雰囲気に染めている。
問題の研究室を覗くと、中で何かが暴れている。よく見るとムカデの様にたくさん手の生えた人間がいる。
「あれはムカデを検体にしたムカデ人間じゃ。人化はしたものの気性が荒すぎる。失敗じゃ。どっちにしろこの研究は中止じゃから良いんじゃがな。」
「博士!そんな呑気な事言ってる場合じゃないですよ!あの検体がこっちに気付いて向かって来ます!」
バン!バン!とガラスを激しく叩いている。
「このガラスは強化ガラスじゃ。そうそう容易くは割れたりは・・・。」
パリパリ!ガラスにヒビが入る。
「へっ??強化ガラスにヒビ?!」
「だから言ったでしょ?早く逃げますよ博士!メデタも早く来て!」
「アイ!マーブル博士を連れて少し離れてて!僕が食い止めるから!早く!」
「でもあなたが!」
「僕の事なら心配いらないよ!だって僕はゴキ人間だからね!」
「メデタ!」
バリバリバリバリ!!強化ガラス全体にヒビが広がる。
バリーーーン!!!とうとう強化ガラスは物凄い勢いで割れてしまう。
「ハラヘッター!!!ハラ!ヘッター!!」
ムカデ人間は腹が減り腹が立っている様子。
「おい!ムカデ人間!ゴキゲン斜めみたいだな!」
「ハーラー!!ヘッターー!!」ブンッ!!
ムカデ人間は攻撃をしたがメデタはギリギリで素早くかわした。
「僕はね、とてもゴキゲンなんだ。
なぜなら、ゴキニンゲンになれたんだからね!!」
ブン!ブンッ!とムカデ人間はお構い無しに攻撃をして来たがメデタはまた素早くかわした。
「何だよ!少しくらい笑えよ!仕方ない。」
メデタは両手を握り、拳を天井へ突き上げたあと「ハッ!!」と気合いを入れながら一気に脇を締めるように拳を振り下ろした。するとメデタの背中の皮膚がベリベリッと剥がれる音がした。頭には髪の毛の間から触角が2本ニョキニョキッと現れた。バサバサバサッ!と背中のめくれた皮膚が羽根の型へと変わった。
そしてメデタは体勢を低くした。「ヨーイ。ドン!」と同時にビュンッ!とムカデ人間の懐を目掛けてもの凄い速さで飛び込んだ。そしてその勢いのままロケットの様なスピードで強烈なパンチを炸裂させた。
「ドゴッ!!」
が、しかしムカデ人間は微動だにしない。
「オイ ナニカ シタカ?」
ムカデ人間の硬い皮膚に覆われているため打撃は通用しなかった。
「まいったな。」
メデタは人差し指で頭を掻きながら苦笑いをした。するとムカデ人間は長い身体でメデタの頭の上を乗り越えた。目線の先はアイとマーブル博士。
「アイ!逃げろーー!!」
アイはマーブル博士の手を引っ張りながら必死に逃げる。
「ハカセ ユルセナイ。ハカセ クッテヤル。」
「はぁはぁ。ヤバイです博士!あのムカデ人間、博士の事怒ってます!」
「はぁはぁはぁ。この、研究は、間違い、じゃったか、のぉ。あいつら、には、悪い、事を、して、しもた。」
ムカデ人間は長い身体を這わせながら2人に接近する。もう後ろへと迫って来た時だった。
メデタはムカデ人間の下半身に後ろから抱き付き、そのまま後ろへと体重をかけると勢いのままバックドロップをした。ズドーーーン!!
ムカデ人間は綺麗に弧を描きながら後頭部から見事に地面へと叩き付けられた。
「オマエ ナゼ ニンゲンノ ミカタ スル?」
ムカデ人間は意識が朦朧とする中メデタに聞いた。
「君達を助けるためだ。もう苦しまなくて良い。また元の姿に戻してもらおう。」
「ソウカ ソレナラ ヨカッタ・・・。」
そう言ってムカデ人間はバタッと倒れた。
アイとマーブル博士がメデタのところへ戻って来る。
「メデタありがとう!」
「本当じゃ、メデタ君のお陰で命拾いした。ありがとう。」
「無事で良かった。それよりマーブル博士このムカデ人間を元の姿に戻してあげて下さい。そしてこの研究で使用された昆虫達も森へ返してあげて欲しいのです。」
「そうじゃな。お陰でよく分かった。この研究は人間の身勝手な考えによって生まれたものじゃ。昆虫達はわしが何とかしよう!」
「ありがとうございます!感謝します!」
メデタはニコッと笑った。
「そうじゃ、そう言えばさっきわしの部屋でメデタ君が話をしてくれた時に思い出したんじゃが、2人に見せたいモノがあるんじゃが来てるれるか?」
「私たちに見せたいモノですか?」
「僕の話と関係あるモノですか?」
アイとメデタは不思議そうな顔をしている。
「まぁまぁ、それは来てからのお楽しみじゃて。」
そう言われた2人がマーブル博士の後に付いて行ったその場所は、『入室禁止』と書かれた研究室だった。