maija

スウェーデン在住/アーバンデザイン/元建築関係/いろいろと勉強中。いまいる都市について、すこし立ち止まって考えるキッカケになる文章を書いていきたい。 ブログ https://maijascape.wordpress.com/

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  • 旅のまにまに

    旅行中のエッセイです。旅の途中で書いたもの、旅のあとで書いたもの、ふり返りながら書いたもの。 旅とその街の記憶を留めておくための文章です。

最近の記事

アヴィニョン 法王とワイン

マルセイユから電車で1時間半くらい北西に行ったところに、アヴィニョンという街がある。最初に聞いたとき、ピカソの「アヴィニョンの娘たち」に関係があるのかと思ったが、このアヴィニョンとピカソのアヴィニョンは別物らしかった。ピカソの絵画は、バルセロナのアヴィニョ通りにあった売春宿の娘たちを描いたもので、名前は似ているが全く別の場所らしい。 この南仏アヴィニョンにかつていたのは、キュビズムの娘たちではなく、ローマ教皇だった。 南仏らしい白い石造りの街並みが印象的なこの街は、かつて

    • マルセイユ5 浮遊する建築

      コルビュジェが唱えた「近代建築の5原則」のなかで、私が最も好きなアイデアは「ピロティ」だ。水平連続窓や自由な平面、自由なファサードといった、技術の進歩で可能になったデザイン上の自由だけでなく、ピロティからは都市問題に対する強い願いを見出すことができる。建築を浮かせることで、地上をパブリックに開放する。その発想が好きだ。都会では、建築物に大地という大地を侵食され、屋外で人々が過ごせる場所は、隙間を縫うような道ばかりだ。富める者には快適な部屋、シェルターがあるから別に良いだろう。

      • 【旅行記】マルセイユ4 コルビュジェとユニテ

        マルセイユに立ち寄ると決めた時、私は「なぜか名前を知っている街だから名所なのだろう」くらいに思っていた。けれども、海に面した港町という基本的なことすら実際は知らなかった。ではなぜ妙に印象に残っているのか。ヒントを探しにWikipediaへ向かったら、すぐに答えは見つかった。ユニテ・ダビダシオンだった。 近代建築の巨匠ル・コルビュジェ、彼の都市構想「輝く都市」に見られる都市への理想が詰まった集合住宅作品だ。ユニテ・ダビダシオンは彼によるいくつかの集合住宅作品の総称で、マルセイ

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          【旅写真】マルセイユ3.5 坂道にて

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        • 旅のまにまに
          9本

        記事

          【旅行記】マルセイユ3 坂とマリアと

          地下鉄のVieux-Port - Hôtel de Ville駅の目の前に広がる湾は、旧港と呼ばれるマルセイユ観光の中心地だ。Vieux-Portが直訳するとOld Port、つまり古い港だ。幅300メートルくらいで、対岸が目の前に見える、さほど大きくない入り江だ。港町という割に、小型のボートばかりが停泊した小さな港だと思ったが、あくまで古い港であって、大型の船が停泊できる港は、この湾の外側の別の場所にある。 入り江の北側にはマルセイユ大聖堂や、古い要塞跡に併設された博物館

          【旅行記】マルセイユ3 坂とマリアと

          リベリアにいる後輩

          Facebookで、クラウドファンディングのリンクがシェアされてきた。リベリアの元少年兵に農業の職業訓練を実施し、農園を開園して自立支援を促すらしい。唐突だ。 発信元は、高校の後輩だった。彼女はいま、リベリアでインターンシップをしているらしい。随分突飛だな。母校は女子校なのだが、女子校だからなのか活きの良い奔放な女が多く、日本にいない同期がちょいちょいいるのは事実だが、リベリアというのはかなり際立っている方ではないだろうか。正直、アフリカ大陸なところまでは想像がつくが、具体

          リベリアにいる後輩

          【旅行記】マルセイユ2 オールド・レイディー

          食事から戻ると、部屋の住人が増えていた。私の母親よりも年上だろうか。日本人からすると、欧米の女性は実年齢よりも高齢に見えるので分からないが、60代か70代くらいに見えた。真っ赤なTシャツを着た、恰幅の良い女性だった。使い込まれた小さなキャリーが、ちょこんとベッド脇に置いてあり、分厚いペーパーバックの本がベッドに転がっていた。 私の中に、ホステルはお金の無い若者が泊まる所、という先入観があったので、彼女のような年代の人を見かけるのは意外だった。バルセロナでは18人部屋だったが

          【旅行記】マルセイユ2 オールド・レイディー

          【旅行記】マルセイユ1 屋根裏

          バルセロナからバスで8時間、国境を越えてフランスのマルセイユに来た。特に目的は無く、耳覚えのある街だから、そして陸路での移動で無難な位置にあったから選んだ街で、次の目的地までの繋ぎのつもりだった。自身初めてのフランスがマルセイユからスタートするとは思っていなかった。人生は予測できないものだ。 バルセロナの宿は半地下だったが、マルセイユの宿は打って変わり屋根裏だった。2フロアのメゾネットタイプで、上が寝室、下階がシャワーとトイレ、ロッカーだった。女性のみの4人部屋で、すでに二

          【旅行記】マルセイユ1 屋根裏

          【旅行記】バルセロナ4 ガウディと虹色の夢

          宿に荷物を置いたとき、既にバルセロナは夕方だったので、その日は街をぶらぶら歩きながら、サグラダ・ファミリア、カサ・ミラ、カサ・バトリョの位置を確認するだけにした。次の日、カサ・ミラとカサ・バトリョへ行き、三日目は友人の勧めで郊外のコロニア・グエルへ。最後の四日目にサグラダ・ファミリアとグエル公園に行った。 バトリョ邸の中に入った時、私の中のガウディ感は大きく塗り替えられた。想像よりもずっと消費的だと思った。それは、アール・ヌーヴォー時代の作品でありながら、とても現代的な空気

          【旅行記】バルセロナ4 ガウディと虹色の夢

          【旅行記】バルセロナ3 ガウディ

           宿で貰った観光地図は、いくつかの建物だけがイラストで立体的に描かれていて、そこが名所だと分かった。地図そのものもデフォルメされすぎず、通りの名も全て入っている。分かりやすい。これがデザインされた地図というやつだ。サグラダ・ファミリアまで宿から歩いて行けることは、予約サイトの口コミで知っていた。地図は宿オリジナルのもので、ホステルの位置にも印が付いている。確かに近い。宿を出て北に直進していけば、そのうち見えてくるだろう。  徒歩圏内のガウディ作品はこれだけでは無かった。カサ・

          【旅行記】バルセロナ3 ガウディ

          サマー・イズ・オーバー

           7月からずっと、毎日30℃という気温だったのに、一昨日の夜の雷雨が夏を黙らせたのか、いきなり気温が20℃になった。窓から流れ込んでくる風が、昨日からひんやりとしている。暑さで怠けていた気持ちが、すっと起き上がってくる感じがした。残暑は無い。夏が終わったのだ。  1週間くらい前にも一度、気温が25℃を少し下回るくらいまで下がった日があった。その日、友人と近くの湖へ水浴びに行く約束をしたいたのだが、朝起きて薄曇りの外の陽気を確認した私は「これは泳ぐ天気じゃない。Summer i

          サマー・イズ・オーバー

          【旅行記】バルセロナ2 ユーロとキャッシュレス

           コペンハーゲンからバルセロナまで、フライト時間は約3時間だった。窓からは、先っちょが黄色い翼が見えた。スペイン系キャリアであるこの航空会社のテーマカラーだ。しばらくは青空に映える黄をながめていたが、そのうち飽きてうとうとしてしまった。  バルセロナの空港から市街までは、バスが出ていた。自動券売機はカードしか使えなくて、難儀している観光客をちらほら見かけた。案内役がいて、現金の人はバスの乗車場で直接買えると誘導していた。スウェーデンでは現金を使う機会が滅多にないので、私は初め

          【旅行記】バルセロナ2 ユーロとキャッシュレス

          【旅行記】バルセロナ1 サマー・ブレイク

           バルセロナを訪れようと思ったのは、近くの空港から安くで行けるチケットを見つけたからだった。友人に教えてもらったKayakというウェブサイトで、出発の空港とおおよその出発時期を指定すると、各都市までの最安のチケット料金を地図上に表示させることができる。旅行したい時期は決まっているが、どこに行くか決まっていない人間にとって、どこに行くのが安いか、高いかが分かる便利なサイトだ。  その時見つけたのは、バルセロナまで、片道38ユーロだった。クラスメイトに言わせれば、これは安いうちに

          【旅行記】バルセロナ1 サマー・ブレイク

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          スイス、ベルンの街並み

          スイス、ベルンの街並み

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          思い立って海に夕日を見に行った日

          自宅から徒歩5分のところにあるICAスーパーで明日の朝食用にパンを買いに行ったら、空がオレンジがかっていることに気がついた。夜の8時過ぎ。日没は夜9時40分ごろだから、夕暮れの時間だ。 この日、一日中部屋でパソコンと向き合っていて、晴れやかな天気をまるで享受していなかった私は、唐突に「日没が見たいな」と思った。サンセット。なんだかセンチメンタルで香しい響き。 ニュースによれば、スウェーデンは5月としては記録的な暑さに見舞われていて、夏真っ盛りといっても過言ではない。そんな貴

          思い立って海に夕日を見に行った日