サマー・イズ・オーバー
7月からずっと、毎日30℃という気温だったのに、一昨日の夜の雷雨が夏を黙らせたのか、いきなり気温が20℃になった。窓から流れ込んでくる風が、昨日からひんやりとしている。暑さで怠けていた気持ちが、すっと起き上がってくる感じがした。残暑は無い。夏が終わったのだ。
1週間くらい前にも一度、気温が25℃を少し下回るくらいまで下がった日があった。その日、友人と近くの湖へ水浴びに行く約束をしたいたのだが、朝起きて薄曇りの外の陽気を確認した私は「これは泳ぐ天気じゃない。Summer is over」とメッセージを送ったのだ。水着を持たず、いつも海では短パンで足だけ水に浸かっていた私が、ついに折れてH&Mで水着を買った矢先のことだった。
それでも、その日のあとはしばらくは暑い日が続いていた。買い物に出掛けたら、紅茶店の女性が「今日はスウェーデン史上、記憶にあるなかで一番暑い日」と笑っていたし、私も暑さに負けて、道端でアイスクリームを食べた。あとどれくらい夏は続くのだろうかと、私はクーラー無し・日当たり良し・保温性抜群なスウェーデン仕様の寮で汗をにじませていた。だがよく考えたら、あの一日だけ涼しかった日は秋の先触れだったのだろう。
一昨日、お盆休暇を利用して北欧新婚旅行を楽しんでいる友人に会いにコペンハーゲンまで出かけた。遅くまで飲んで、結婚式の写真をしこたま見せてもらい、日本にいる友人の近況なぞを聞かせてもらった。そして夜中に気分よくスウェーデン側に帰ってきたら、土砂降りの雷雨だったのだ。駅のホームが見える場所に住んでいるのに、部屋に着いたらずぶ濡れだった。それくらい激しい雨だった。
雨が降ったので、涼しくなるだろうとは思っていた。そしたら次の日の最高気温は、前日と比べて10℃近くも低い20℃と、想像をはるかに超えた涼しさだった。昼間は秋晴れのような素晴らしい日になったが、夕方ごろから天気が陰りはじめて、日が暮れてからは、雨が降ったり止んだりを繰り返しはじめた。
私は、去年この街に来たばかりの秋を思い出した。このスコーネ地方の秋は、曇りがちで、不意に雨が降っては止み、という気まぐれな天気なのだ。瞬間的な雨だから、天気予報はたいしてアテにならない。突然雨が降っては止む、ロンドンの天気に似ていると思ったものだ。
不規則な雨から一夜明けた今日の天気は、まさに去年の秋に何度も見たようなモノだった。空が真っ白に曇っていて、雨がザアッと降っては小雨になったり、止んだり、と不安定で、そしてひんやりと寒い。思えば今日は、入寮してちょうど1年だ。季節がひと巡りして、その最後だった夏がちょうど終わったのだ。
来年の夏は学位を取り終えてきっと日本にいるだろうから、この夏の終わりを見る事はもう無いのだろう。